新型コロナウイルスの影響で、長い間イベントの中止や制限が続いてきたなか、碧南市民病院では、2023年5月、4年ぶりに「ふれあい看護フェスティバル」を開催しました。訪れた人が、無料で健康のチェックや相談ができるものです。今年度、再開し始めた対面でのイベント。スタッフは、地域とのつながりを取り戻し、誰もが訪れやすい病院にしていきたいと話します。
碧南市民病院のいまと、地域に開かれた病院を目指す看護スタッフの思いを取材しました。
コロナ禍で奮闘してきた碧南市民病院
2023年5月8日に新型コロナは感染症法上の5類に移行されました。
3年以上にも及ぶコロナ禍、碧南市民病院は、様々な制限があった中でも、地域の医療機関として奮闘してきました。
最前線の現場で新型コロナと戦ってきた感染制御室 看護師長の生田幸江さんは、これまでをこう振り返ります。
「正直、あっという間の3年間でした。当初は病原性とか感染性がはっきりしない中、手探り状態での対応で、職員も動揺しながらも一生懸命頑張ってくれていたことに感謝しています。私自身は病院でのさまざまなことをまとめたり、報告したりする必要があり、毎日0時を過ぎるまで働き、心が張り裂けそうで、車の中で泣きながら帰るくらいで。本当に辛かったです」
地域とのつながりを絶やさないように
そんな苦しい中でも、地域の病院として、地域の人たちとの繋がりを無くさないように努めてきたといいます。
「出前講座を行ってきました。例えば『知って得するワクチン』や、小学生を対象に感染対策としての手洗いの講座などを開き、多くの皆さんに新型コロナウイルスの基本を知ってもらう努力をしてきました。そのようにして地域とのつながりを絶やさないように頑張ってきたつもりです」
と語る生田さん。
5類移行後の現在では、制限がある中ですが、面会を再開。発熱外来を、外での診察から病院内での診察に切り換え、電話による診療なども終了しました。
これまでも様々なイベントを開催
これまで碧南市民病院では、「ふれあい看護フェスティバル」以外にも、小学生病院体験ツアーや高校生一日看護体験など、様々なイベントを行ってきました。しかしその多くが、コロナ禍で中止や内容変更を余儀なくされました。
「ふれあい看護フェスティバル」も、コロナ禍で中止になるまで15年以上続いていたそうです。しかし今回は4年ぶりの開催となったことで、20人ほどいる催事スタッフのほとんどが初めて関わっているといいます。
地域の人たちとのつながりを意識
この「ふれあい看護フェスティバル」は、予約不要で無料、血圧や骨密度の測定のほか、移動機能を確認するロコモ度テストなどの健康チェックに加え、介護や健康の悩みを専門家に相談できるというものです。市民と交流し、誰もが訪れやすい病院にしていくと共に、市民の健康意識を高めてほしいという狙いで開催されています。
看護師の加藤亮光さんは、「初めてなので分からない事ばかりですが、碧南市民病院は碧南にある病院なので、入院患者さんだけでなく地域の方々とのつながりを意識するためには、こういうイベントも大事だと思います」と話してくれました。
4年ぶりのフェスティバルは盛況
4年ぶりの「ふれあい看護フェスティバル」は、3時間ほどの間に80人以上が訪れ、盛況のうちに終了しました。
参加していた人に感想を聞きました。
「こんないい機会はなかなかないですね。自分の悪い所や食事の改善方法を教えてもらったので、勉強になりました」
「病院だと安心感がありますよね。教えてくれる内容に対して信頼性が高いというのがよかったです。ただ今回は、たまたま娘が教えてくれましたが、お年寄りにはなかなか開催の情報が入りづらいと思います」
感染対策を考慮しながらのイベントだったこともあり、あまりお知らせをしていなかったようです。このことについて副看護師長の加藤由紀さんはこう話します。
「感染対策をしながらイベントやっていますが、やはりどうしても不安があると思います。それでも、もう少し広報してもよかったかなと思います」
また、副看護師長の吉田咲子さんも、「前もってイベントの開催予定などを広報やSNSでお知らせして、今後も市民の人たちと交流できるようにしていきたいと思います」と話してくれました。
普段の診察では出てこない相談も
しかし、今回のイベントでは普段の診察では出てこない相談が多く寄せられるなど、成果は大きかったといいます。
「当院でもワクチンの予約をしていますが『打った方がいい?』と相談される方もいました。コロナのことが聞きたくても聞けないまま、コロナはもう終わったと思ってしまっている人もいたので、コロナの相談ブースがあってもよかったかなと思っています」
と加藤さん。
安心して受診できるような病院でありたい
碧南市民病院では、今後も7月に小学生の病院体験ツアーを行うなど様々なイベントの開催を予定しています。
加藤さんは、目指す姿についてこう話してくれました。
「地域にはたくさんの病院がありますが、この病院に来て看護師さんに相談してよかったと思える、医師がいて、安心して受診できるような病院でありたいと思っています。自分も自分の家族もかかれて、そういう病院でいたい。地域の方に選んでもらえる病院でありたいです」
開かれた病院を目指す
看護師長の生田さんは「病院というと、ついつい足が遠のきがちです。でもこのようなイベントを通して、碧南市民病院にはこんな看護師さんやお医者さん、さまざまな職種の人がいるというのを見ていただいて、将来 お子さんやお孫さんたちが医療従事者を志す1つのきっかけになってくれたらいいなとも思います。今後も、開かれた病院を目指して頑張っていきたい。お越しいただけるようなイベントを作っていきたいと思っています」と話します。
市民の健康意識を高め、地域に開かれた病院へ。碧南市民病院の奮闘は続きます。(取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子 2023年5月取材)
碧南市民病院
住所:愛知県碧南市平和町3丁目6番地
電話:0566-48-5050(代表)
公式サイト
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