愛知県刈谷市にある愛知教育大学。教員を目指す学生が多く通うこの大学に、小学生や中学生にSDGsを広めようと取り組む学生団体があります。SDGsを楽しく学んでもらうための教材づくりや、啓発活動に取り組んでいるSAGA(サーガ)です。
教材の力でもっとSDGsを楽しく学んでもらおうと活動する学生たちの挑戦を見つめます。
教員の卵たちが遊びを通してSDGsを伝える
SAGAのメンバーは37人(2023年5月現在)。毎週金曜日に学内で集まり、教材づくりなどの活動に取り組んでいます。
代表の市川佳依さんにSAGAの活動について聞いてみました。
「SAGAでは、小中学生に向けてSDGsを普及啓発するための教材を作っています。学校の先生になるための勉強をしている人たちの集まりなので、教材作りが強みです」
メンバーの木村祐貴さんは、教材作りで心がけていることを教えてくれました。
「子どもが楽しんで遊べるものでありつつ、伝えたいことがしっかり伝わるつくりになるよう工夫しています」
未来を担う子どもたちにSDGsを
国連が定めた持続可能な開発目標SDGsは、社会全体で意識を高めることが求められています。日本の教育現場でも2020年度から新しい「学習指導要領」の導入が始まっていて、SDGsを子どもたちにどう教えていくのかの試行錯誤が続いています。
愛知教育大学 理科教育講座の大鹿聖公教授は、教材の意義について次のように教えてくれました。
「いろんな教科でSDGsが取り上げられるようになりました。カードを見て合わせるだけで何となく理解できるようになりますし、さらに長い話を聞くのが苦手な子でも、こういったツールはすごく有効です」
遊びが学びにつながる教材を
SAGAが作った教材には、「SDGsカルタ」や「生態系8ならべ」などがあります。
中でも代表作は、「バイオミミクリー・トランプ」だそう。バイオミミクリーとは「生物模倣」を意味する言葉で、生き物の特徴を製品開発などに活かすことを意味します。カードは生き物と製品がペアになっていて、神経衰弱のようにして遊びながら学ぶことができます。
「生物模倣と言われても分かりにくいですが、実際にトランプで具体例を見ながら組み合わせて気づきが得られるように作っています」とメンバーの谷口佳蓮さん。
教材を使って対面の授業でSDGsを伝える
5月中旬。大学内でSAGAのメンバーが教材の準備をしていました。中学校の受け入れ授業の一環として、SAGAのメンバーが中学1年生とカード教材で交流することになったからです。これだけの大人数での交流は、メンバーにとっても初めての経験です。自慢の教材は、子どもたちに楽しんでもらえるのでしょうか。
実際にはじまると、会場は盛り上がり、中学生の笑顔がはじけました。反応は上々のようで、SAGAのメンバーもほっとした様子です。
教材を通してメンバーが伝えたいこと
中学生たちとカード教材で交流したSAGAのメンバーたち。この日、中学生たちに伝えたい大切なことがありました。
思う存分遊んだ中学生たちに向け、谷口佳蓮さんが真剣な表情で語りかけます。
「もし一つでも生物がいなくなってしまったら、生態系が崩れてしまいます。だから名前も知らないような生き物もしっかりと守っていかなければいけません」
中学生たちは谷口さんの言葉を真剣に聞き、谷口さんが話し終えると自然に拍手が起こりました。
教材を広めるための新たな挑戦
「バイオミミクリー・トランプ」を使って、さらにSDGsを広めようと、SAGAが新たな挑戦として取り組んだのがクラウドファンディングです。
SAGAが開発したこの「バイオミミクリー・トランプ」を、西三河の216小学校に寄贈するため100万円を目標に設定しました。
およそ2か月間の募集を経て、2023年5月にクラウドファンディングは見事成功。
学生たちの想いが詰まった教材は、秋に西三河の216校に寄贈される予定です。
今後も挑戦を続ける若者たち
社会全体で取り組む必要があるSDGs。教員を目指すSAGAのメンバーは、今後も未来を担う小中学生にSDGsを楽しく伝えていくことが目標です。
「子どもたちがやろうと思うのではなく自然と夢中になれることが大事。それをどうやって作っていくかが課題です」と語る代表の市川さん。
教材の力でSDGsをもっと楽しく。若者たちの挑戦は続きます。(取材・撮影:リンドワークス/文:石川玲子 2023年5月取材)
愛知教育大学 学生団体SAGA(サーガ)
SDGsの普及・啓発を教育面から推進していこうと、2020年4月に設立
愛知教育大学ホームページ
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