いまだ感染への不安が広がる新型コロナウイルスは、産前・産後の母親たちにとっても大きな影響を及ぼしています。そんななか、分娩や健康相談・育児を支えるため、精力的に活動する助産師が、愛知県西尾市と刈谷市にいます。
外に出ることに不安を感じるいまだからこそ、インターネットでの相談サービスや出張訪問を通じて母親たちの不安解消の手助けをしています。今回は、コロナ禍の母親を支える助産師たちの姿を取材しました。
母親たちの不安に寄り添う助産師
西尾市の「りこ助産院」で院長を務める荒川涼子さん。助産師歴19年になる荒川さんは、もともと碧南市の病院で助産師として勤務していましたが、2017年に助産院を開業。コロナ以前から、出張専門で授乳ケアやマッサージ、妊娠中の相談などを行い、母親たちを支えてきました。
子どもが好きで、子どもに関わる仕事がしたいと助産師の道を選んだ荒川さん。自身も小学生2人と中学生1人、3人の子どもを持ち、自らの子育てや、仕事での豊富な経験を活かしながら、日々、産前・産後の母親たちを支えています。
出張訪問で母親たちを支える
荒川さんは、新型コロナの流行によって母親たちの悩みが変わってきたと言います。「子どもの発育や健康で不安があっても、感染への不安から病院に行きづらく、乳腺炎などで発熱しても、病院から受診を断られてしまうことも。そのため、自宅で過ごす時間が増え、母親たちが不安を解消しようとネット検索をすると、情報が多すぎて何が正しいか分からなくなってしまったり、正しい情報を得られたとしても、上手くいかないことに自身を責めてしまったりすることがある。」
だからこそ、出張訪問で直接、母親たちと言葉を交わし、孤独感を解消したいと荒川さんは話します。
共に悩み、考え、寄り添うことの大切さ
この日は、依頼者宅を訪問した荒川さん。母親の悩みは、母乳を飲む量が減ってきた赤ちゃんの健康状態についてでした。荒川さんは、赤ちゃんの体重を測ったり、母親や子どもの仕草や話から悩みを感じ取ったりしながら、相談に乗ります。相談を終えた母親は「家で子どもたちといるだけだと不安に陥ってしまうので、話を聞いてもらえて良かった」と笑顔を見せます。
荒川さんは自身の子育ての経験も踏まえ、「子どもの様子などは個人差が多いこともあり、これが正解とは言えないこともあります。だからこそ 共に悩み、考え、寄り添っていきたいです」と語ってくれました。
オンラインで母親に寄り添う
また、オンライン会議システムを活用した相談サービスを行う助産師もいます。愛知県刈谷市に住む「じょさんしonline」の代表・杉浦加菜子さんです。
「長女が9か月の時に、夫の転勤でオランダに行きました」という杉浦さん。遠く離れた海外では、子育てについて日本語で気軽に相談できる人がいなかったといいます。そんな自身の経験から、オンライン会議システムを活用して、離れた場所からでも母親たちの顔を見ながら相談できるサービス「じょさんしonline」を2019年から始めました。
外出せずに相談できる、オンラインサービス
このサービスは事前予約制。15人の仲間と協力することで夜でも対応。2019年は、およそ100人の相談がありました。助産師たちの豊富な経験に基づくアドバイスは、オンライン上でも母親たちの大きな支えとなっています。「オンラインなら、家にいながら相談ができ、さらに好きな時間や助産師が選べる」と杉浦さん。
人と接することをためらう人も増えるいま、じょさんしonlineの利用者は、「コロナ禍で在宅時間が増える今だからこそ、夫婦で参加することができ不安が解消され良かった」と杉浦さんたち助産師に感謝を述べていました。
いまだからこそ あなたの助産師を
出張訪問やオンライン相談など形は違っても、母親や子どもの仕草や話から悩みを感じ取り最も良い方法をアドバイスする助産師たち。
西尾市の「りこ助産院」の荒川さんは、「母親の孤独になっていく思いや子育てがうまくいかないという悩みもコロナと同じぐらい、それ以上に危険。一人にしてはいけないと思う。自分の子育て経験も踏まえて、相談にのっていけたら」と話してくれました。いまだからこそ、母親たちに寄り添う助産師が求められています。
(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2020年9月取材)
りこ助産院
西尾市を中心とした出張専門の助産院。母乳・栄養相談、育児相談、乳房ケア、リンパマッサージなどを行う。
訪問営業時間:9時~16時
定休日:土日・年末年始・不定休あり
問合せ:「りこ助産院」ホームページ
じょさんしonline
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