近年、女性の就業割合が増加する一方、その減少傾向が続くのが製造業です。
社員89人で、製造現場を含めた女性の就業割合が、28%という愛知県西尾市のコクネ製作。女性活躍推進法に基づき、厚生労働大臣から「えるぼし」の三ツ星に認定された、女性が働きやすい職場が自慢です。
今回は女性活躍を目指す、西尾市のコクネ製作の取り組みに注目します。
製造現場で働く女性は
コクネ製作が手がけるのは、グループ会社が製造した鋳物製品の精密加工。プリント基板に電子部品を配置するチップマウンターや工作機械の土台になる、「架台」を製作しています。ほかにスカラロボットと呼ばれるロボットアームの組立も行っています。
加工課加工グループの兵藤麗奈さんは、マシニングオペレーターとして巨大な工作機械を操作します。設計部門を経て、入社3年目で自ら製造現場を志願したそうです。兵藤さんに志願の理由を聞きました。
「事務所でじっとしているよりは、現場で身体を動かして働きたいという気持ちがありました」
仕事にやりがいを感じている
この日、兵藤さんが加工するのは、重さ約1.5トンにもなる架台です。同僚と声を掛け合いながら、架台をクレーンで移動し、マシニングセンターにセットして加工を始めます。
現場ではまだ珍しい女性オペレーターの兵藤さん。どんな思いを持っているのでしょうか。
「覚えることが大変だったり、重いモノも多かったりしますが、周りの人が助けてくれます。大変なことも多いけど、この仕事をやってよかったなと思うこともたくさんあります」
仕事と子育ての両立には会社の制度が不可欠
調達課の課長、長田郁絵さんはコクネ製作で初めての女性課長です。2人の小学生の母親で、出社前には通勤がてら、子どもたちを学校まで送り届けています。しかし午前7時50分の始業時間に合わせようとすると、子どもたちが家を出る時間が、ずいぶん早くなってしまいます。
そこで活用するのがフレックスタイムです。
この日は定時よりも30分遅く出社し、慌ただしい中でも子どもたちとコミュニケーション取ることができました。
「朝はどうしても子どもがグズることもあります。そういうときでも気持ちに余裕を持ってしっかりと子どもに向き合えるのが良いです」
子育て中の社員にやさしい制度
フレックスタイム以外にも、コクネ製作には子育てをする社員にやさしい制度があります。たとえば小学6年生までの子どもの病気やケガ、予防接種や健康診断のため、年間5日まで取得できる「子の看護休暇」。入学式や卒業式、授業参観など年間3日まで取得できる「育児目的休暇」など、子育て支援が充実しています。
「若い女性も多い会社なので、私たちのように育児と両立しながら働く姿を見れば『自分にもできそう』って思ってもらえるのではないかと思います。制度が整っていると感じます」と長田さん。
男女を問わず働きやすい環境づくりを目指す
人手不足が慢性的なものづくり現場で、女性の積極的な採用や働きやすい環境づくりをめざすコクネ製作。そこにどんなねらいや思いがあったのか、代表取締役社長の宮島佑介さんに聞いてみました。
「人口の減少や労働力の減少を考えた場合、男性女性を問わず働ける職場を目指していくことが、人材を確保する一つの手段になると考えています。フレックス制度の導入や、職場をきれいにする工夫を行い、女性にも働きやすい職場にすることを意識しています」
他社では見られないある傾向が…
コクネ製作の社員の年齢構成を見てみると、20代から30代が主体で、課長の平均年齢も37歳と、非常に若いのが特徴です。さらに、家族ぐるみで働く社員が多いのも特徴です。
検査課組立グループの神谷茉世さんは2022年3月に入社し、普段はスカラロボットの組立を担当しています。神谷さんは、夫もコクネ製作の切削加工現場にいて、入社を強く勧められたそうです。
神谷さんに入社のきっかけを聞きました。
「働く前から、会社の人と家族ぐるみで仲良くさせていただいていました。そういった経験から、会社の人のやさしさなどを知り、ここで働きたいと思いました」
今後も社員が働きやすい環境づくりを目指す
2006年に入社した加工課 課長の春田高利さんは、2年前に弟と妹を会社に紹介しました。
「男性も育休を取りやすかったり、新婚夫婦も旅行に行ける休暇があったりします。こういう会社だから将来も成長していくと思い、誘いました」
コクネ製作には現在、1組の親子と2組の夫婦、そして5組のきょうだいが働いています。社員が働きやすい環境づくりからSDGsを進めるコクネ製作。目指す未来の姿を宮島さんに聞きました。
「女性の活躍はこれからも目指していきます。目標としては、どの人も自分が好きな時間に職場に来て働けるような会社にできればと思っています」
(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子 2023年5月取材)
コクネ製作
グループ会社が製造した鋳物製品の精密加工などを手がける。SDGsの達成に向けた様々な取り組みを行っている。
愛知県西尾市法光寺町流20-3
電話:0563-64-3395
公式サイト
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