2023年4月、愛知県刈谷市恩田町に開園した「みとはな保育園」。0歳~2歳までの28人が通う、認可外保育園です。保育園には安城や知立、豊田など市外から通う子どももいます。
真新しい園舎からは、子どもたちの元気な声が聞こえてきます。
この保育園は、10年ほど公立の保育園で働いてきた保育士夫婦が、子どもたち一人ひとりの生活リズムに合わせた育児をすることや、親子が安心して通える園にしたいとつくり上げました。保護者の負担を減らす工夫もみられます。少子化対策や子育て支援が叫ばれる中、新しい保育園の形、みとはな保育園を取材しました。
子どものペースに合わせた保育を提供
保育園を立ち上げたのは、松場勇佑さんとみずほさん夫妻。
二人は海外の保育について学ぶ機会があり、それが保育園を立ち上げるきっかけになったそうです。「日本はまだまだ保育後進国といわれています。日本の外に目を向けて保育を知る中で、この年齢の子どもたちにとって、全員一緒に何かをやるというのは発達的にも難しいことと感じました。ですので子どもたち一人ひとりの生活リズムにあわせて保育をしています」
例えばお昼の時間には、給食を食べている子もいれば、すでに食べ終わってお昼寝をする子もいます。それぞれのペースに合わせて日課を決めているのです。
注目を集める「流れる日課」
ところで一部の子どもが給食を食べ始めると、他の子どもも欲しがらないのでしょうか?
みずほさんに聞いてみると、「ここでは同じ大人が同じ子どもを見るようにしています。なので、日常の繰り返しの中で、子どもたちは次に自分がどのような行動をするのか、見通しが立つようになります」。
この一人ひとりの生活リズムを尊重する保育は「流れる日課」とよばれ、今、注目を集めています。一斉保育の課題でもある、熱中している遊びを中断させられたり、意味もなく待たされたりするストレスがなく、のびのびと過ごすことができるのです。
遊びに集中できるような工夫も
みとはな保育園のもう一つの特徴は、真っ白な壁に無垢の木の床など、ナチュラルな雰囲気です。一般的な保育園のように色画用紙でつくったカラフルな飾りなどはありません。
「目に入る情報が多いと子どもは集中しにくくなってしまいます。おもちゃに色がついている分、まわりの装飾は落ち着いた雰囲気になるようにしています」と勇佑さんは話します。
さらにみずほさんは、「インテリアだけでなく、職員の服の色もナチュラルなものを選んでいます。キャラクターエプロンなどにしないようにしています」と語ります。
保護者の負担も減らす工夫
みとはな保育園では、保護者の負担も少なくするための取り組みも行っています。
たとえば昼食やおやつの時に使うエプロンと口ふきタオルは園で用意しています。さらに毎日何枚も使うおむつは、保護者が毎月定額を払うことで何枚でも使用できるサブスクのシステムを取り入れています。
保護者にとっては、おむつ一枚一枚に名前を書いたり、毎朝準備したりする手間が省け、園に持っていく荷物も減ります。さらに履かせ間違いもなくなるため保育者の負担も減らせるという効果もあります。近年では、こうしたサブスクを取り入れる園が増えています。
保護者の反応は
みとはな保育園に子どもを通わせている保護者たちに保育園の印象を聞いてみました。
「のびのびと、好きなことをとことんやらせてもらっているようで、毎日楽しいと言っています」
「保育方針や子どもたちへの配慮がいいと思い、この園を選びました」
「認可保育園に落ちてしまったのでここにいれたのですが、自主性を大切にし、子どものやりたいことをやらせてくれるので、良い保育園に入れたと思っています」
育休中のお母さんも
保護者の話を聞いていくうち、こんなケースもありました。
「下の子が産まれたのですが、育休中に2人同時に見るのが大変だったので、上の子に一回保育園に入ってもらうことにしました」
公立や認可の保育園は、育休中に上の子どもを預けられない園が多く、出産したばかりの大変な時期に上の子どもを退園させなければいけないケースも多いのです。
一番誰かに助けてほしい時期に
みずほさんは自身の経験をこう語ります。
「私自身2番目の子が産まれたとき、出産したばかりの身体で上の子の面倒も見なければいけなくなって本当に大変でした。一番誰かに助けてほしいと思った時期だったので、その時に保育園が何か力になれないのかと強く思いました。育休中で働いていない子のお母さんのお子さんも預けられるようにしようと決めました」
親子が安心して通える園に
また、仕事が休みの平日は子どもを預けられない保育園が多い中、みとはな保育園は子どもを預かってくれます。
「お母さんお父さんもリフレッシュする時間が大切です。リフレッシュして笑顔で子どもに接することが子どもにとって良いことだと思っています」とみずほさん。
みとはな保育園は認可外のメリットを最大限に生かして、親子が安心して通える保育園を実現しているのです。
子どもたち一人ひとりに寄り添う
勇佑さんが保育園の名前の由来を教えてくれました。
「みとはな、という名前は『実と花』からつけました。今後は園庭に子どもが食べられるような、遊びに使えるような木や花をたくさん植えて、たくさん自然と触れ合える園にしていきたいです」
それ以外にも子どもたちの個性を実らせて花開かせたい、そんな思いも園の名前には込められています。
画一的ではなく、子どもたち一人ひとりに寄り添うみとはな保育園。それは、子どもも親も笑顔になれる新しい形の保育なのです。
(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子 2023年4月取材)
みとはな保育園
住所:愛知県刈谷市恩田町2丁目163-9
電話:0566-25-0708
みとはな保育園 公式サイト
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