子どもの成長は早く、季節が変わるとすぐに服が着られなくなってしまいます。特に3月頃は衣替えや幼稚園・保育園の入園準備などで、新しい服が必要となってきます。
自宅にある洋服やおもちゃなどを必要としている人に譲る活動は「バイ・ナッシング・プロジェクト」と呼ばれ、いまや世界中で広がっています。
今回は愛知県刈谷市に本社を置く株式会社デンソーの福利厚生施設「D-Square」と「おさがり交換会わらしべ」が取り組む「バイ・ナッシング・プロジェクト」の活動を紹介します。
D-Squareの「バイ・ナッシング・プロジェクト」
JR刈谷駅に近い場所にあるD-Square。株式会社デンソーの福利厚生施設であるここは、和食、中華料理などのレストランがあり、地域の人も訪れて楽しんでいます。
D-SquareではSDGsの目標達成のため、さまざまな取り組みが行われています。
担当係長の入川稔さんは、「SDGsの一つとして『バイ・ナッシング・プロジェクト』を考えています。子どものおさがりやおもちゃ、絵本などを含めて、不要な物を次の人に譲る動きが、お客さんのSDGsへの第一歩につながり、社会貢献になればと考えています」と言います。
2人の想いが、イベント共同開催に
D-squareでは、2022年9月から始まった「バイ・ナッシング・プロジェクト」の一環で、施設のレストランを訪れるお客さんとデンソーの社員を対象に、自宅に眠っている絵本を持ち寄ってもらい、必要な人と交換できるように試みました。これまでに集まった絵本は約200冊。
この活動を通じて入川さんは、名古屋市を中心に子ども服やベビー用品などの交換をしている「おさがり交換会わらしべ」の稲吉由香さんと出会い、イベントを共同開催することができました。
おさがり交換会の必要性
「おさがり交換会わらしべ」の必要性について、代表の稲吉さんは、こう語ります。
「少子化と核家族化によって近所づきあいがなくなっています。おさがりを近所の方に渡す機会が減り、少子化により、兄弟間でもおさがりを回せなくなりました」
また別のスタッフは、子育て中は予想以上に服が必要だと語ります。 「私服の保育園や幼稚園ならば、毎日の服が必要です。さらに着替え用に園においておかなければならない服もあるので、全部買おうと思うとそれなりの値段になってしまいます。そういうのをおさがりで揃えたいというニーズがあります」
参加者の声は…
実際に、おさがり交換会に訪れた人に話を聞いてみました。
「いま子どもが着てる服が、前の交換会でもらったものです。兄弟が多いので、ここでもらえると色々助かっています」
「子どもが着ていた服をおさがりに出せるのがうれしいです。もったいないけど売るほどではないし、あげる人もいないのですが、ここに持ってくると誰かが使ってくれます」
自分のお気に入りが、誰かのお気に入りに
集められた絵本が、新たな子どもたちに渡される様子を見ていた入川さんは 「この場所を地域の人に開放して、ハブとなってこのような活動が広がっていけば」 と今後の希望を語りました。
稲吉さんはこの会における大切なことをこう語ります。
「ただ、いらなくなったから持ってくるのではなく、自分のお気に入りだからまた誰かに気に入ってもらいたいという想いで持って来てほしい。そういう想いの交換会であってほしいです」
D-Squareで行われたおさがり交換会を通して、地域の人との間で不要になったモノを譲り合い、末永く使ってもらうことで、持続可能な社会につなげていく。そんな一端が見えた気がします。
(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン /文:石川玲子 2023年2月取材)
D-Square
愛知県刈谷市に本社を置く株式会社デンソーの福利厚生施設。 和食、中華料理などのレストランがあり、 平日のディナーは株式会社デンソーの関係者のみ利用可能。 一般のお客さんは平日のランチ、または週末のランチ・ディナーが利用可能。
住所:愛知県刈谷市中山町2-38
電話番号:0566-62-0555
D-Squareホームページ
おさがり交換会わらしべ
サイズアウトなどで不要になった子ども服やおもちゃ、絵本などを寄付したり交換できる「おさがり交換会」を名古屋市や三河地域を中心に開催。
「あなたのお気に入りがまた誰かのお気に入りに」をテーマに活動している。
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