2023年3月7日。愛知県内の多くの中学校で卒業式が行われました。3年間の思い出を胸に旅立ちの日を迎えた生徒たち。新型コロナの影響により臨時休校からはじまった中学校生活でしたが、それでもこの3年間を悲観することなく、大きな成長の糧にして、卒業式を迎えました。
今回は愛知県安城市にある東山中学校を取材し、この3年間で得られた経験とは何かを、生徒・教師らの声からお伝えます。
臨時休校からはじまった中学校生活
2020年4月。新型コロナの影響により県内の学校は入学式後、臨時休校を余儀なくされました。愛知県安城市にある東山中学校も例外ではなく、当時の状況を香村直廣校長は「もちろん臨時休校は初めての経験でしたので、やっぱり迷いもありました。どうしたらいいんだろうと常に考えさせられました」と、話します。
また臨時休校から3年間、生徒を見続けてきた3年2組の担任、尾崎里美先生は、「入学式後、子どもたちと会えない期間が1か月以上続き、せっかく出会えたのに相手を知る時間がないという不安な時期が続いていました」と、当時の心境を語ってくれました。
さらに臨時休校が明けても、様々な制限の中での教師たちには葛藤があったといいます。
「体育祭で生徒に円陣をやりたいと言われても『それは難しい』と言わなければならなかったり、子どもたちがやりたいと言ったことにストップをかけなければいけなかったり、とても辛かったです」と、当時の出来事を振り返る尾崎先生。
それでも東山中学校の生徒たちはこの3年間、様々な制限を悲観することなく、試行錯誤を繰り返し大きな成長の糧にして、卒業の日を迎えたといいます。
前を向き、歩み続けた3年間
そんな生徒たちの想いが感じられる言葉が卒業式の日にありました。 2023年3月7日、東山中学校の251人の生徒たちが卒業証書を受け取ったあとに行われた、代表の生徒らによる「卒業生別れのことば」の一文です。
「2020年4月、新型コロナウイルスの影響で2か月間の休校からはじまった中学校生活。どうして自分たちがと、悔しい気持ちがふつふつと湧き上がってきました。それでも現状を嘆いて立ち止まるのではなく、どう前に進んでいくのかに目を向けることの大切さを、身をもって学んだ僕たちは、3年間一歩一歩前に進んできました。」
試行錯誤し充実させた学校生活
この言葉の通り東山中学校の生徒たちは、全員で集まることが難しければ、それぞれで作った絵を一つのモザイクアート作品にすることで団結を深めたり、全校合唱ができなければ、各クラスの歌声を一つの映像にまとめることで実現させたりと、3年間どんなときも前を向き、試行錯誤して学校生活を充実させてきました。
生徒の一人、3年2組の渡部さんは、「行事では、声を出したり、マスクを外したりすることはできなかったけど、その制限のなかでも少しでも楽しい行事にしようと一人ひとりが努力してきました。東山中学校で様々な行事ができて良かったと思います」と、中学校生活を振り返ります。
コロナ禍だからこそ得られた経験
こうした生徒たちの姿について、香村校長は「世の中からコロナ禍を嘆く声はたくさん聞こえてきました。でも生徒たちは、目の前にある現実を受け止めて、アイデアを出し合うことで、相手に寄り添った納得できる答えを導きだそうとしていたと思います」と、話してくれました。
そして、コロナ禍だからこそ得られたものもあると尾崎先生は言います。「話し合う時間はコロナ前よりすごく増えたと感じます。例えば、合唱みたいに声を合わせることで仲間意識を高めるような機会はなくても、話し合いを重ねて信頼関係をつくっていくという経験が多くありました。」
コロナ禍で得られた経験は生徒たちも同様に感じています。髙見さんは、「マスクをしていて表情がわからなかったので、言葉でコミュニケーションをとること大事だと感じました。コミュニケーションをとる力がついたと思います」と、話します。
また、山口さんは「この3年間は自分にとって成長できるタイミングだったと思っています。大変な時は一番変われる時です。大変な時をマイナスに捉えずにプラスに捉えて、今後も色々なことに挑戦していきたいと思います」と、今後の決意も語ってくれました。
最初で最後の学年合唱
卒業式の最後、中学校生活最初で最後の学年合唱「群青」が披露されました。
この合唱曲「群青」には、尾崎先生をはじめ東山中学校3年生を受け持った先生たちの想いが込められています。「『当たり前が幸せだと知った』という歌詞に、この3年間が凝縮されているなと思ったので、群青を合唱曲に選びました。コロナ禍で当たり前がなくなってしまったけど、それを生徒と一緒に乗り越えられたのは幸せだったと思います」と、語る尾崎先生。
合唱が響き渡る体育館には、コロナ禍を前向きに工夫しながら歩んできた青春の日々を振り返りながら、晴れやかに歌う生徒たちの姿がありました。
当たり前に感謝し過ごした青春の日々を胸に
卒業式後、校庭で別れを惜しみながらも笑顔で過ごす生徒たち。その姿を誇らしげに見つめていた香村校長先生は、「子どもたちは、日々の当たり前に感謝しながら、工夫して学校生活を送ったんだなと感じます。そして、生徒たちの姿がみなさんの目にキラキラと映ったのなら、東山中学校で過ごした時間は素敵な青春だったのだなと思います」と、話してくれました。
コロナ禍での制限はあっても、生徒たちにとっては「一度しかない、かけがえのない中学校生活」。そんな3年間を過ごした生徒たちは、そのなかで得た経験と感謝の想いを胸に、新たな道へと旅立っていきます。 (取材・撮影:上西将寛/文:石川玲子 2023年3月取材)
安城市立東山中学校
愛知県安城市里町東山1番地
電話:0566-98-1531
「安城市立東山中学校」ホームページ
「シリーズ・コロナ後の地域を考える」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ コロナ後の地域を考える」では、この地域の人々の声から、アフターコロナを見据えたこの先の未来をどう生きるのか、そのヒントを探ります。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。