子どもたちが大好きな「おもちゃ」。何度も使ううちに動かなくなってしまうことは、よくあることです。捨ててしまうにはもったいないし、修理して使うのは家庭では難しいこともあります。
おもちゃを長く大切に使ってもらうために活動をする、刈谷おもちゃ病院の取り組みを紹介します。
家庭では修理が難しいおもちゃを受け入れる
刈谷おもちゃ病院は、愛知県刈谷市の交通児童遊園の管理棟2階にあります。元々、保育園の巡回おもちゃ修理活動を行っていたボランティア団体が、2007年におもちゃ病院を創立し、翌年にNPO法人化されました。毎月、第2第4の土・日曜日に開院していて、おもちゃの修理代は原則無料です。開院日には、多くの人が訪れます。
「無料で直してくれるし、捨ててしまうおもちゃが使えるようになるので、エコにもなるかなと思い、お願いにきました」と語る利用者。
この取り組みは、SDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」につながっています。
「捨てればゴミ、直せば宝物」
受付で「診察申込書」に症状や連絡先などを書き、おもちゃは入院となります。受付を担当するのは、理事長の三輪恒雄さんです。
「状態を見て、どこが悪いのか予測をつけて、お客さんやメンバーに説明しています。『捨てればゴミ、直せば宝物』という精神でやっています」と三輪さん。
また、刈谷おもちゃ病院を立ち上げた石川良雄さんは 「きっかけとなったのは、刈谷市の不燃物埋立場で廃棄物の処理場を見学したことです。ちょっと直せば使えそうなおもちゃが大量に捨ててあり、もったいないと修理の活動を始めました」と想いを教えてくれました。
ボランティア・ドクターが症状に合わせ修理
入院したおもちゃを診察してくれるのは、登録しているボランティア・ドクターたちです。定年退職した人たちのほか、現役世代や大学生と幅広く、およそ30人が登録しています。
修理の様子をのぞいてみると 「これは電池が液漏れして端子が錆びてしまっていますね。端子がちょっと歪んでもいる。他にも壊れているところがないか確認しています」 「ぬいぐるみ系のおもちゃは、切らないと中を確認できないから修理の後は縫い直します。裁縫上手になりますよ」 その内容は様々です。
ない部品は作る 3Dプリンターも活用
院長の松岡正夫さんが修理の内容を教えてくれました。 「主には部品の交換です。部品がない場合には作って対応しています。プラスチック部品を木で代用することもあります」
なかでも、おもちゃに多く使われる歯車は、形が似ていても歯の数が違ったりして使いまわしが難しいため、3Dプリンターで作ってしまうそうです。
操るのは、刈谷おもちゃ病院を立ち上げた石川さんです。
「3Dプリンターを導入してからは、今まで直せなかったものも直せるようになりました。特殊な部品を買う必要もなくなりましたし、我々のスキルアップにもなります」 と語る石川さん。
これまでに15,000近くのおもちゃを修理
おもちゃが直ると、ホームページなどで修理完了が知らされます。
刈谷おもちゃ病院では2023年1月末現在で、のべ15,000近くのおもちゃを退院させてきました。この日も、おもちゃの受け取りに多くの親子が訪れていました。
受け取りに来た利用者に話を聞いてみました。
「細かいところまで、納得いくまで直してくれるので助かります」 「直してでも使いたいおもちゃもありますよね。『動かなくなっちゃった』で捨ててしまうのではなく、長く使えるのでいいと思います」
子どもたちの喜ぶ姿が原動力に
おもちゃを使い続けたいという親子の願いをかなえ続けるおもちゃ病院のボランティア・ドクターたち。 「直ったおもちゃを取りに来たときに、子どもたちが喜んでくれる。そういうのが毎回うれしいですね。子どもたちの喜ぶ姿が私たちの喜びです」と院長の松岡さん。 理事長の三輪さんは、自分たちの活動をこう語ります。 「ここ20~30年は『新しいものを買った方が安い』という文化が続いていた。そういう考え方に疑問をもつのが私たちの活動です」 ボランティア・ドクターたちの人への優しさが地球への優しさにもつながっています。 (取材・撮影:土田隆浩/文:石川玲子 2023年2月取材)
刈谷おもちゃ病院
家庭で直せないおもちゃを修理。毎月、第2第4の土・日曜日午前10時から午後3時まで受付と診療を行う。診察と治療(修理)は無料ですが、部品代や材料費などは実費がかかることがあります(100円~300円程度、それ以上の場合は事前に相談)。
住所:愛知県刈谷市神田町3丁目47番地1
電話番号:0566-27-6466
刈谷おもちゃ病院 ホームページ
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