新型コロナウイルスの影響で、出かけることに誰もが悩んだ2020年夏。そんななか、四季折々の花や緑に囲まれ幅広い世代に親しまれている愛知県安城市の観光スポット「デンパーク」では、コロナ禍でも来園者に楽しんでもらおうと、ある変化が起きていました。
世間が停滞ムードとなるなか、絶えず歩み続けたデンパークのスタッフたちの姿を追いました。
コロナの影響を受ける、花と緑の空間
安城市赤松町にあるデンパークは敷地が広く、施設の多くは屋外であることから新型コロナの影響を受けにくくみえます。しかし、2020年3月、新型コロナの情勢を受け、リニューアルした大温室のセレモニーは中止に。さらに翌月には緊急事態宣言により休園に追い込まれました。
デンパークの都築将樹常務理事は「セレモニーは、1年間準備してきたのでやりたかったのが本音です。休園も悩みました」と話します。コロナ禍であらゆる計画が白紙となったのです。
ビュッフェからテイクアウトへ
園内で飲食店を経営する会社にも影響は...。ビュッフェ形式の「農場レストラン花車」は、緊急事態宣言が解除されデンパークが営業再開してからもレストランの休業を継続していました。感染拡大によりビュッフェへの警戒感が高まり、今後の判断を迫られていました。
そこで、花車を運営する株式会社ネクストの丸山公房社長は、テイクアウト形式の丼専門店に業態転換することを決めました。「業態転換することは今後コロナと共生していくための飲食店のあり方のひとつ」と話す丸山社長。丼専門店にすることで店舗面積を縮小、人員配置も見直し、収益の確保を図ります。
コロナ禍でも進化するための店づくり
2020年7月上旬、花車では丼専門店へのリニューアルオープンに向けて急いで準備を進めていました。店を任されたネクストの社員・倉橋宣行さんは、店づくりに意気込みながらも不安をのぞかせます。「従業員の中には生活のために働くパートの主婦も多いため、リニューアル後の収益次第では従業員の生活にも影響が及んでしまう。」
コロナ禍での業態転換は、新たな飲食店のあり方を模索できる一方で、"成功させなければならない"というプレッシャーもあったようです。
そして、7月18日、花車がリニューアルオープンしました。店内でお客さんを待つ従業員に「マスクの下は笑顔で!」と声をかける倉橋さん。コロナ禍での新しい一歩がはじまりました。訪れたお客さんも「今はビュッフェだと怖いので、こちらの方がいい」と笑顔を見せます。
丸山社長は今回の業態転換について「新しい時代についていくために、先を見据えて行動することが大切。コロナ禍をきっかけに、店や会社も一緒に進化していければいいと思っている」と語りました。
新たな施設「BBQガーデン ピクニック」
この夏、花車の隣のスペースでも、新たな計画が進んでいました。手ぶらでピクニックをコンセプトにした「BBQガーデン ピクニック」です。この計画を進めるデンパークの日髙真琴さんは「手作りのソーセージや国産三河牛などを味わうことができます」と、新しい施設の魅力を語ります。
しかし、ここでもコロナの影響が...。オープン直前の8月6日、2回目の県独自の緊急事態宣言が発出されたことで、予約の変更やキャンセルが相次ぎました。日髙さんは不安な表情を見せながらも「日々状況が変わるなかですが、withコロナでお客様の安心を守り運営していくことに注力したい」と話します。
来園者の笑顔のために
不安を抱えるなか、オープンを迎えた「BBQガーデン」でしたが、そこにはバーベキューを楽しむ来園者の姿がありました。
「距離感も保てて、外でバーベキューができるから思い切って来た」、「家からも近いし、密じゃないからここを選んだ」と来園者には好評のようです。また、「自然が見られて、心が広くなるからデンパークが好きです」と、ここで過ごす時間を大切にしている人たちの声も聞こえてきました。コロナの影響に一喜一憂しながらも、前に進み続ける。デンパークは来園者の笑顔のために、これからも進化を続けます。
(取材・撮影:堀めぐみ/文:石川玲子/2020年8月取材)
安城産業文化公園 デンパーク
かつて安城市が「日本デンマーク」と呼ばれた歴史をもとにつくられた花と緑の公園。
場所:愛知県安城市赤松町梶1
TEL:0566-92-7111
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