オルタナティブスクール おおきな木。オルタナティブとは、「代案」という意味で、学校の代わりになるスクールを意味します。「従来の小学校には行かない」という「選択」をした子どもたちは、ここで学校教育の代わりとなる学びに励んでいます。
今回は、子どもたちの自由に選択する力を育んでいる、安城市の「オルタナティブスクール おおきな木」を通して、教育の多様性や代案について考えます。
自分の自由で選択する「学びの場」
開校3年目、安城市の「青少年の家」の一室を学校として借りていたオルタナティブスクール おおきな木は、2023年1月末に、安城市今池町に拠点を移し、新たなスタートを切りました。
代表の遠藤昌代さんはこのスクールの特徴をこう語ります。 「学校復帰を目的としていない場所です。イメージとして近いのはインターナショナルスクールですかね。一般的な小学校に行くのではなく、目的を持ち、積極的な気持ちを持って選んで通う場所です」
毎日の遊びの中、学びは詰まっています
おおきな木には現在15人の子どもが通っていますが、スクールに行くか、行かないかは子どもたち自分で決めます。取材の日は、6人の子どもが来ていました。
毎日の時間割には「国語」や「算数」などの授業はありません。子どもたちは学ぶことも、遊ぶことも自分で自由に選択して過ごします。遠藤さんは子どもたちの選択に関与せず、見守るだけです。この日、子どもたちが選んだのは、カルタでした。
普通の小学校だけが子どもの居場所というわけではない
子どもたちに勉強の時間がなく、本当にこれでいいのかと疑問が浮かびましたが、それには理由があります。 遠藤さんは、子どもたちが自由に遊ぶ中で、学びの必要性を自ら感じてもらうために、大人が一歩引いて見守ることが大事だと言います。
「子どもたちを見ると言いたくなるし教えたくなるので、あえて見ないようにしています。そうすると子供たちが劇的に変化し始めます。子どもを信じてそのときを待つのが私の役割です」
子どもたちを信じて待つという役割
おおきな木では、お昼ご飯も自分たちでつくります。300円以内という制限で、材料も自分で購入します。その様子を見ていると、学びはすでに自然な流れの中で始まっていました。
子どもたちは300円という制限の中、お腹も満たし、さらにお菓子も確保するため必死に計算します。他にも人数分のホットケーキを美味しく作るために、足し算や掛け算、割り算を繰り返します。先生に言われたわけでもなく、必要に迫られた「算数」の時間です。
お母さん、自由になりたい
おおきな木に通う小学6年生のこはるさん。韓国アイドルと漫画が大好きな明るい女の子ですが、4年生の頃には、学校の教室に通えなくなっていたといいます。
友達関係で問題があったわけでもなく、優しい子だったので学校の先生もいろいろな形で学校に通えるように配慮してくれたと言います。 こはるさんのお母さんは当時をこう振り返ります。 「小学校1年生1学期の終わりに『ママ、私自由になりたい』と言い出しました。」
子どもの変化が周りの変化に
当初は、学校に通わないことで「社会の枠から外れてしまう」「子どもの学習の面が心配」など家族の中に不安と心配があったと言います。
おおきな木に通うようになって、明るく変わっていくこはるさんの顔を見て家族は安心したと言います。こはるさんのおじいさんはこう語ります。 「学校に行かないことに対して、私自身が不安なだけで、こはる本人は不安ではないかもしれない。だから私の不安をこはるにぶつけるのは間違っている。」
こはるさんが思う「おおきな木」
おおきな木に通うようになったことで、こはるさん自身にも変化があったと、こはるさんは言います。
「自分で考えて行動することができるようになりました。普通の学校が自分に合っていると思うならば学校に行くのは間違いではないと思います。でも私には普通の学校に行くのは合わなかったんだと思います」
そう語るこはるさんを見守る、おばあさんも「今は楽しそうに行っているのでその顔見るのが嬉しい」と笑顔を見せてくれました。
おおきな木に通う子どもたちの家族は
子どもたちが自由に過ごし、活き活きとしている姿に、お母さんたちも驚いています。お母さんたちにそれぞれの思いを聞いてみました。
「子供が失敗しないように親が子供の人生を決めなきゃいけないような気がしていましたが、子どもは自分の力で道を見つけることができるんだとわかりました」 「小中高と進むのが当たり前だと思っていたのですが、こういう風に選択肢がたくさんあるのは大事なことだと思いました」
もう一つの学校教育の在り方「おおきな木」
教育の現場でも多様性が求められている中、子どもたちが自分の人生を自由に選択していく力を育む「オルタナティブスクール おおきな木」は学校教育のもう一つの在り方かもしれません。
最後に遠藤さんは 「教育というのは成果が見えにくく、何十年も後、子どもたちが社会に出てはじめて分かるものです。私は彼らが彼ららしい新しい価値観で生きていくことを助けるだけです。その活動をずっと続けていきたいです」と目標を語りました。
オルタナティブスクール おおきな木
子どもたち一人ひとりが選択し決定し行動することを大切にしています。
やる自由だけでなくやらない自由も保障しています。自分で自分のことを決めて行動する力を育むことが子どもの幸せにつながると考えるからです。 スタッフである大人も子どもたちと共にみんなでつくっていくスクールです。
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