子育て中のお母さんたちにホッと息抜きできる時間を過ごしてもらおうと、安城市のNPO法人ingが今年度から開催している「おいしいじかん」。子育ての経験や保育士の資格を持ったスタッフによる、親子交流会です。お昼になるとスタッフが用意した昼食をみんなで食べます。
ing理事長の松岡万里子さんは、「実家に来たようなくつろぎの時間を提供できたら」と語ります。コロナ禍でお母さん同士の交流の場や実家に帰る機会が減る中、「おいしいじかん」が、お母さんたちのホッとできる場となっているのです。
昼食つきの親子交流会「おいしいじかん」
2023年1月のある日、安城市朝日町にある「ingハウスここから」では、まもなくはじまる親子交流会「おいしいじかん」にむけて準備がすすめられていました。2022年6月にスタートした昼食つきの交流会です。コロナの蔓延で8月はお休みとなりましたが、それ以外は月に1回開催。コロナ禍での昼食の提供に葛藤もありましたが、お母さんたちに喜んでもらうことを考えると、昼食は外せませんでした。
「メニューはいつもカレーとしているので、スタッフで話し合ってどんなカレーにするか決めています」と準備中のスタッフ。
誰もが生きがいや学びを通して豊かに
iNPO法人ingは、誰もが生きがいや学びを通して豊かな生活を送ってもらいたいという目的で設立された団体です。1993年に活動をはじめ、今年ちょうど設立30周年を迎えます。これまでにも、乳幼児の託児つき講座の開催や、高齢者が出かけるときの同行、認知症カフェや、発達に不安がある子どもの親が集まるサロン、パソコン講座など様々な活動を行ってきました。
ingを立ち上げた代表の松岡さんは、第四子を亡くした、つらい経験をきっかけに活動をはじめたといいます。当時悲しみに暮れていた松岡さんに、友人が学びの場に行くことを勧めてくれ、3人の子供の面倒を見てくれたといいます。学びを通し、松岡さんは再び前を向くことができました。
「どう生きて、どう死んでいくのか。生きていく甲斐がある人生をみんなに歩んでもらえるような居場所を作りたいんです 」 という松岡さん。その思いでingを立ち上げました。
レクリエーションで親子でリラックス
さて、冒頭の「おいしいじかん」。午前10時になると参加する親子が集まってきました。コロナ対策のため、毎回4組を上限にしています。子どもたちにリラックスしてもらうために、まずは絵本と歌でスタート。絵本はスタッフの手作りです。
その後の自己紹介では、日頃の悩みや今年の目標などを一人一人話していきます。続いてのレクリエーションではヨガ講座が開かれました。インストラクターの資格を持つスタッフが子どもの抱っこで肩や腰がこりやすいお母さんが楽になるようなヨガを教えてくれました。レクリエーションは毎月内容が変わります。
お母さんが話しやすい雰囲気を作る
活動しながらスタッフがお母さんとしゃべったり、悩みを聞いたりします。時にはスタッフが自分の子育ての経験を話します。お母さんたちが話しやすい雰囲気、共感できる空間を作っているのです。 「誰かと喋りたかった。もともと名古屋にいたので、名古屋にいる友達とも会えなくて、寂しくて……」 「育児してると大人と喋りたいなーって思うので」 「一人目なので、詳しい人に聞けると助かります。子育ての先輩の意見、役に立ちます」 と、お母さんたちは話してくれました。
みんなで昼食の時間
最後は、みんなで昼食の時間。この日のメニューは、スープカレーとサラダ。カレーは、お母さん用と子ども用の2種類用意しています。一日3食を用意するお母さんたちに、たまには楽をしてもらいたいという思いがこめられた「おいしいじかん」です。
「あったかいものが食べられる。座ってお茶が飲めるのがすごく嬉しい」 と喜ぶお母さんの姿も見られました。
「おいしいじかん」を発案したのは、スタッフの杉浦雅弓さんです。自身も子育て中の杉浦さんが、お母さんのための新たな取り組みをはじめたいと、メンバーとアイディアを出し合いました。
「ごはんを食べるとお腹がいっぱいになるだけでなく、心も満たされるし、話も弾みます。実家のようなあたたかい、居心地のいい場所にできるように、自分の経験を活かしながら、皆さんに有意義な時間にしてもらえたらと思います」
おいしいじかんが目指すもの
「おいしいじかん」が目指すものを他のスタッフにも聞いてみました。 「育児のことだけでなく、身体のことや生活面でも協力できればと思っています」 「子どもさんが心地よく過ごせるように、お母さんも周りも支えられる時間にしたいですね」
ここにいる間は、いつもスタッフがお母さんに寄り添い、話を聞いてくれるのです。 おしゃべりをしたり、おいしいごはんを食べたり、悩みを聞いてもらったりして、笑顔で帰っていくお母さんと子どもたち。この笑顔のために、ingのスタッフは、「おいしいじかん」をお母さんたちに提供しているのです。 (取材・撮影:映像舎/文:石川玲子 2023年1月取材)
特定非営利活動法人ing
年齢に関係なく誰もが学ぶ機会を持てるように乳幼児の託児つきの講座や高齢者が出かける時の同行など様々な活動を行っている。「おいしいじかん」は毎月第3水曜日に開催している。
交流拠点:ingハウスここから
愛知県安城市朝日町14-11
電話 090-1826-7289
受付時間 月曜~金曜 10:00~15:00
特定非営利活動法人ing公式ホームページ
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