愛知県碧南市や西尾市などで飲食店を経営する傍ら、惣菜や弁当を製造・販売するマルテツフーズ。
2022年11月7日、フードロスゼロを目指して、安城市三河安城本町に無人販売所をオープンさせました。自社で製造した弁当や総菜のフードロスゼロへ向けた挑戦に迫ります。
食品業界が抱えるフードロスの課題
碧南市のとある食品スーパー。店内の「食彩工房 あじ畑」では、午前8時の開店前から、すでに厨房で惣菜や弁当作りが始まっています。午前11時を回ると、売り場が賑わい始め昼時のピークを迎えますが、どうしても売れ残りも出てきます。
午後 4 時近くになると惣菜や弁当の値引きが始まりますが、一方で、夕方用に揚げ物などの惣菜が追加で用意されます。
食品業界で常に隣り合わせの問題が、値引きしても売れ残ってしまい発生するフードロスです。
マルテツフーズはこういった売れ残ったものをどうにかできないかと、2022年11月7日に安城市三河安城本町に無人販売所をオープンさせました。
フードロスの現状
日本のフードロス発生量の推計を見てみましょう。上の青い部分が事業系、下の緑の部分が家庭から出されるフードロスです。近年、環境意識の高まりから発生量は減少傾向ですが、それでも年間500万トン以上の食品が無駄になっています。マルテツフーズの支出の割合をみても、消費されずに廃棄される弁当や総菜の割合が、全体の15%にも上ります。
マルテツフーズ代表取締役の五十嵐巧さんに、現在の状況を聞いてみました。
「昼を過ぎたら2割引き、夕方から夜にかけては半額で惣菜を売っています。それでもロスは出て廃棄になってしまいます。もったいないですよね」
無人販売所をオープンし新たな計画も
そこでマルテツフーズでは、午後1時になると、別の場所で販売していた弁当を売場から移動させ、あじ畑の厨房に持ち帰ります。新たに値札を貼ると安城市三河安城本町のコンテナショップへと運びました。そこが 24 時間営業の無人販売所です。
利用者は弁当や惣菜を選ぶと、合計金額のチケットを券売機で購入して回収箱に入れるだけ。価格は 50 円刻みで、およそ消費税相当分が値引きされています。
この取り組みについて五十嵐さんに聞きました。
「何時でも販売できるのが無人販売所のメリットです。それでも、朝にはロスが出てしまいます。そこで今、新たな計画を立て準備が進んでいるところです」
協力者と共に貧困家庭支援にも力を注ぐ
五十嵐さんが協力を依頼したのは、安城市内で子ども食堂を運営するなどの活動を行っている、「にじいろ子ども応援団」代表の朝倉美佳さんです。フードロスの食品を貧困家庭の救済に役立てたいと考えたのです。
朝倉さんに貧困家庭支援の可能性についてうかがいました。
「貧困っていうと『うちはそんなんじゃない』『外に知られたくない』という人もいます。ですので、どなたにどうやってお渡しするかの問題があります。無人販売所の引き取りでは深夜などに行えるようになっており、人と会わずに受け取れるメリットがある一方で、車がないとここまで来られない人もいるなどの課題があります」
貧困家庭支援への想い
マルテツフーズはこれまでも貧困家庭を支援しようと、月に 2 回程度、碧南市役所内のレストラン「味ふうせん」を開放し、子ども食堂の開催を応援してきました。食材も一部提供しています。
「子どもたちにはいいものを食べて欲しいという思いがあり、食で体は良くなるし行動が良くなるし、この国の未来を考えると大事なことだと思います。これからを担う子どもたちを応援しつつ、貧困層の人たちに喜ばれるようにしていきたいですね」と五十嵐さん。
フードロス削減に向け新たな可能性を探る
あじ畑の厨房では、フードロス削減に向けて新たな実験を行っています。売場から下げた弁当などを袋に詰め、なにやら作業を始めました。導入した急速冷凍機を使い、値引き前の弁当や惣菜を冷凍してストックすることで、賞味期限を延ばしフードロス削減ができないかと考えています。
この取り組みについて五十嵐さんは
「無人の販売所で冷凍販売できないかと考えています。そうすればお客さんがいつでも食べられるので」と教えてくれました。
フードロスをゼロにすることは極めて困難なことですが、それでも必要とする人に必要な食品を届けるためにマルテツフーズの挑戦は続きます。
(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子 2022年12月取材)
マルテツフーズ
愛知県の碧南市や西尾市などで飲食店を経営するかたわら、総菜や弁当を製造・販売。フードロスゼロを目指して安城市三河安城本町に2022年、無人販売所をオープン。
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」では、この地域で広がっているSDGsの取り組みや、活動を紹介しています。
詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。