愛知県安城市は、eスポーツなどのデジタルコンテンツを活用して社会課題を解決しようという取り組みを行ってきました。この「ケンサチeフェス」プロジェクトで2022年10月に行われたのが、高齢者を対象にした「eスポーツ交流会」です。
高齢者の介護予防や健康増進にeスポーツを活かそうという安城市の取り組みを取材しました。
誰もが楽しめるeスポーツを活用
eスポーツは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、ビデオゲームなどの対戦をスポーツ競技ととらえるものです。手軽にできて頭や体を使うことから、高齢者の介護予防や健康増進にeスポーツを活かそうという動きが始まっています。
安城市 健幸=SDGs課 企画政策係 係長の近藤真行さんに、交流会開催のねらいについて聞きました。
「2022年は、市制施行70周年という節目の年を迎え、SDGsの理念のもと、誰もが活躍できる機会を創出するため『ともにかなえる』をテーマに事業を行っています。eスポーツは年齢や性別、障害の有無、国籍などを超えて、誰もが楽しめるので活用しようと取り組んでいます」
応援されるうち夢中になる選手たち
交流会に先駆けeスポーツの体験教室が、市内の各福祉センターなどで開かれました。最初はぎこちなくても、参加者たちは楽しみながら体感的に覚えられるゲームにすぐに慣れていきました。
たくさんの人に応援されるうちに、だんだん夢中になる人が出てきたそうです。
参加者の一人は「楽しかったです!がんばりました!応援もして、力一杯叩いたらストレス発散になりました」と、興奮気味に話してくれました。 ゲームを初めてプレイした人たちばかりでしたが、その魅力を十分感じることができたようです。
大会に向けて熱心に練習 応援にも力が
そして、交流会直前になると、市内の各福祉センターでは、選手が熱心に練習する姿が見られました。
「やらないと上達しませんから。がんばります」と語る参加選手。
一方で、安祥福祉センターでは、趣向を凝らした応援グッズも用意されていました。
「かわいいでしょ。うちわにイラストを描いて飾りつけしました。地元のチームを応援します」と語る選手の友人たち。こちらも気合い十分です。
市内3か所で「eスポーツ交流会」開催
迎えた2022年10月29日、「eスポーツ交流会」当日。総合福祉センターなど3か所の会場には、参加者が続々と集まってきました。
会場の一角では、ウォーミングアップを行う人たちの姿もありました。
安城市 健幸=SDGs課の近藤さんは
「今日はオンラインで3つの会場をつなぎます。参加してくれる人には、インターネットを使って離れた場所でも交流できるということを経験してほしいです」 と話します。
コロナ禍ということもあり、北部福祉センターと桜井福祉センターも結んで、分散で開催されました。
会場全体で参加者を応援
一回戦は各会場の選手同士で対戦。応援する人たちも配られたスティックバルーンをバチ代わりに、選手と一緒になってプレイを楽しんでいるようでした。二回戦からはインターネットを使って、離れた会場の選手と対戦します。選手たちに気持ちを聞いてみました。
「スーパーなどで子供たちがゲームをして楽しんでいるのは見ていましたが、こうやって実際にやってみると、楽しいですね」
「やる前は大変そうだと思っていましたが、実際にやってみたら思っていたよりも楽しかったです。こういう交流会をどんどんやってもらいたいですね」
交流会の適度な緊張感も良い方向に働いたようです。
頭や体を使い「健康に良さそう」
市内の各福祉センターで選手を2人ずつ選んで、16人で頂点を競った今回のeスポーツ交流会。決勝戦まで勝ち上がったのは、ともに桜井福祉センター会場の2人でした。2人に、これまでの練習を振り返ってもらいました。
「福祉センターや家のタブレットで大会に向けて練習してきました。脳トレになっていいですね」
「一人でゲームをするだけでなく、相手と対戦したり、お互いにアドバイスしたりと、会話のきっかけにもなって楽しかったです。eスポーツは頭や体を使いますし、健康にも良さそうです」
参加者もその効果を体感していました。
介護予防・健康増進に活かしていくために
主催した安城市も手ごたえを感じたようです。健幸=SDGs課の近藤さんは、今後についてこう語ります。
「介護予防のためには、継続的に取り組んでいただくことが大切です。このような機会を通じて一緒に練習した人や応援した人と、今後も気軽に楽しめるような機会をもってもらえるといいですね」
一方で、参加者の中には、本番前の予選が終わってしまったら練習に来なくなってしまった人もいて、継続的に続けていけるような環境が欲しいと言う人もいました。
誰もが参加しやすいeスポーツを介護予防や健康増進にどう活かしていくか。今後に期待が寄せられています。
(取材・撮影:オフィスげんぞう/文:石川玲子 2022年10月取材)
「ケンサチeフェス」
スポーツ等デジタルコンテンツを社会課題解決のためのツールとして活用していくプロジェクト。令和4年度の市制施行70周年に向けて、令和3年度からスタート。
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」は、キャッチの番組でも放送中!
番組名:特集「地域の今」
地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。
「シリーズ 未来へつなぐSDGsの輪」では、この地域で広がっているSDGsの取り組みや、活動を紹介しています。
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