平成30年碧南市空家等対策計画によると、住まなくなった建物を今後どうしたいかという質問に、「近いうちに取り壊したい」と答えた人が21.3%でした。碧南市民の約5分の1は建物の解体や、建て替えを考えているということです。
そんな中、地域の家づくりを行ってきた愛知県碧南市の白竹木材株式会社は、古くなった民家をもう一度改修し住み続ける「民家再生」を提案しています。
SDGs17のゴールのうち12番目の「つくる責任・つかう責任」です。
5人のうち1人が取り壊すことを検討
さまざまな理由で、住んでいた建物に住み続けることが難しくなる、もしくは住まなくなる場合があります。
碧南市の「平成30年碧南市空家等対策計画」によると、住まなくなる理由として、「住んでいた人が施設入所、長期入院、死亡等」が 32.8%と最も多く、住まなくなってしまった建物を今後どうしたいかという質問には、「近いうちに取り壊したい」が21.3%で、慣れ親しんだ家などの建物を解体、建て替えることを考えていると答えました。
3代以上を考えて建てた古民家
白竹木材のギャラリーとして使われている建物は、築71年の木造建物を改修したもの。社長の棚橋みさ子さんは、解体されてしまう民家などの建物について、
「昔の人は、1代で家を住み終えるのではなく、3代くらい住み継ぐように家を作っていました。そのため乾燥した材木を吟味したりして、いい素材を使うようにしていました。だから、簡単に壊してはもったいない」と語ります。
明治13年に建てられた古民家の再生
碧南市新道町にある榊原哲子さんの家。この家も、白竹木材が民家再生を行った建物です。明治13年に建てられ、築およそ140年にもなる建物です。哲子さんの母親が亡くなり兄弟でこの家を受け継ぎました。
榊原さんは 「家の前の通りは交通量も多く、外からのほこりや排気ガス、また上の梁などからは ほこりがいっぱい落ちてきて……これは、全体的に直さないと住めないなと思いました」と言います。
思い出を守りつつ性能を高める民家再生
この家で生まれ育った榊原さん。この家には、榊原さんと家族の思い出がたくさん詰まっています。昔の形や思い出を活かしつつも、不便を無くして住み続けたいという思いがあったため、白竹木材は民家のしっかりした梁や構造、窓枠など、家の雰囲気はそのまま維持する一方で、隙間風と道路からの騒音を防ぐため、断熱性と気密性を高めました。
改修が終わった今「やはり、この家が一番落ち着く」と榊原さんは微笑んでいます。
民家再生でお洒落なお店に変身
榊原さんのように、家を改修し住み続ける場合もありますが、実際住んでいない建物を再生する場合もあります。
知多郡武豊町にある喫茶店治郎兵衛(じろべえ)。明治時代に建てられたこの建物では代々味噌屋が営まれ、現在は喫茶店として使われています。店主の澤田敏充さんと尚子さん夫妻は、今住んでいる自宅とは別に、尚子さんの母親の実家だったこの建物を受け継ぎました。
建物を残した理由は
「時間というのを大切にしたかったんです。この建物も、庭の木も100年近く使われてきたものですから」
澤田さんは、100年以上続いている民家を取り壊さずに利用できる方法を探して、白竹木材に依頼をしたと言います。そして再生されたこの建物は、古民家を改修したお洒落なお店として、多数の雑誌にも紹介されています。妻の尚子さんは、昔の思い出があるこの建物が残され、使われていることが嬉しいと言います。
白竹木材の民家再生への思い
白竹木材の倉庫にはたくさんの古い材木が眠っています。棚橋さんがまだ使えると思うものを解体現場でもらってきたものです。
「こういう材木を活かしたいです。民家の価値というか、民家の良さを世間に知っていただきたいですね。改修し、新しくなった民家が素敵と思う人は、ぜひ今後も残してほしいです。」 そう語る棚橋さん。
「古い民家を取り壊さず、直し、使い続ける」という選択肢は、今後さらに可能性を広げるでしょう。(取材・撮影:金世俊/文:石川玲子 2022年10月取材)
白竹木材株式会社
煎売喫茶 治郎兵衛
住所:愛知県知多郡武豊町里中128-1
電話番号:0569-72-0160
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