中高生の部活動にも大きな影響を与えている新型コロナ。そんななか、運動部の大会を地方開催のみで実施するなど、コロナ禍でも出来ることを模索する動きが広がっています。
全国の高校文化部の祭典「全国高校総合文化祭」もまた、2020年の開催をWeb上で行うと決めました。初めてのWeb上での開催、さまざまな制限のなかで参加する高校生たちは何を感じ、どのように取り組んでいるのでしょうか?そのひたむきな姿を伝えます。
初めてのWeb開催となった「総文祭」
高校文化部のインターハイと呼ばれる「全国高校総合文化祭」、通称「総文祭」は、毎年夏に開催されています。2020年の会場は高知県。演劇や書道、美術、吹奏楽などの23部門の作品を発表、学生同士の交流も行われるはずでした。
しかし、主催する全国高等学校文化連盟は「新型コロナの終息する見通しが立たないこと」からWeb上での開催を発表。高知県総文祭推進室の宮尾法子さんは「通常の発表は困難でも、全国の高校生たちの発表を何らかの形で残すことはできないかと協議した結果、Web上での開催となりました」と話します。
朗読部門に出場する 刈谷高校放送部
総文祭に出場する高校のひとつ、刈谷高校放送部では、2年の田中英理さんが放送専門部の「朗読部門」に出場します。田中さんは2019年秋に開催された県大会で3位を獲得し、愛知県の代表に選ばれました。
Web上での開催となったことで、事前に音声を収録し大会のWebページに登録してエントリー。田中さんは会場で朗読発表ができなくなってしまったことに不安を感じつつも「私の声でみんなもその場面にいるように感じてもらえるよう、今年しかできないものをつくりたいと思います」と意気込みを語ってくれました。
例年と異なる緊張感。ひたむきに練習に励む
「朗読部門」の課題となる本は、郷土にゆかりのある作家、または郷土を舞台とした作品です。田中さんは愛知県が舞台の作品「さよならドビュッシー」を課題に選びました。ピアニストを目指す女の子が火事で重度の火傷を負い、ピアニストの夢を諦めかけるも、再びピアノが弾けるようになるまでのストーリーです。
「主人公の心の強さが魅力的だと思います」と作品の魅力を語る田中さん。去年から練習に励んできた「さよならドビュッシー」の朗読を、納得のいく作品にしたい。その一心でひたむきに練習に励んでいました。
一丸となってエールを送る仲間たち
田中さんと同じ放送部の仲間も田中さんに優勝してほしいと練習をサポート。顧問の遠藤慎也教諭も「抑揚の付け方やイントネーション」のアドバイスを行いながら、「田中さんは緊張感が高まるほど力を発揮できる」と期待を寄せます。
また、本来なら総文祭にも出場する予定だったものの、コロナの影響を受け6月で部を引退することとなった3年生も「Web上での開催ということで、これまでとは空気感も・緊張感も違うと思うので頑張ってほしい」と後輩にエールを送ります。
西尾東高校 総文祭への思いを書に
田中さんと同様に総文祭への思いを胸に作品づくりに励む生徒がいます。総文祭の書道部門に出場する西尾東高校文芸部書道コース3年の永見和さんです。書道部門では、作品を撮影したデータで審査が行われます。
会場となる予定だった高知県の伝統工芸品「土佐和紙」や、よさこい祭りで使用する「鳴子」などに漢字やメッセージ、地域の自慢などを書にしたため作品づくりに励む永見さん。「Web上で全国の代表の人たちの作品が見られるのが楽しみ。多くのことを吸収したい。」と大会に向け、一文字一文字、丁寧に書き込んでいました。
コロナ禍での経験が未来につながる
刈谷高校放送部では田中さんがいよいよエントリーに向けて朗読の収録に臨んでいました。特に力を入れているのが最後の言葉。何度も何度も録りなおし、ついにOKが出ます。「やればやるほど上手になる」と田中さんを労う遠藤教諭。田中さんも「一番良い読みができたと思います」と満足そうです。
「これからも部活を頑張り、自分の実力アップにつなげられたらなと思っています」と語る田中さん。コロナ禍でベストを尽くした今年の経験は、生徒たちにとって大きな財産となりそうです。
(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2020年7月取材)
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