愛知県刈谷市にある愛知教育大学では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛要請が続くなか、全学部で大学以外の場所で授業を受けられるよう、2020年5月からリモート授業の取り組みが始まりました。
授業では、インターネットを利用して映像や音声をライブ配信したり、オンデマンドで、資料や動画を配信して課題の提出を求めたりしています。こうした取り組みは創立以来初めてということ。試行錯誤を繰り返しながら見えてきた、リモート授業の課題と可能性について取材しました。
インターネットで配信される授業
愛知教育大学生活科の加納誠司教授の、大学院生向けのオンライン授業にお邪魔させて頂きました。この授業では90人以上の学生がオンラインで参加し、加納教授は研究室のパソコンから授業を配信します。「カリキュラムのデザインと評価」という必修科目の授業で、オンラインの授業としては、今回で3回目になるそうです。
「毎回、途中で音声が切れてしまうなどのトラブルもありますが、授業の様子を録画しておき、あとで共有できるようにして、学生に学びが保証できるようなんとかやっています」と加納教授は言います。
オンデマンド授業とリモート授業
加納教授の授業ではオンラインで授業を行っていますが、大学全体では、資料や課題をウェブ上にアップしておいて学生はそこにアクセスして課題をするオンデマンドというスタイルが多いそうです。教える側も教わる側も、模索しながら授業を進めています。
教務企画課長の戸田克己さんによると、大学では普通の教務システムのほかに、「まなびネット」という学習支援システムを導入。教授が教材や課題をシステムの中に置き、学生がそれをダウンロードして課題を実施。それと並行し、一部リアルタイムで行われる双方向の授業を取り入れているそうです。
教室と違い、全員が見えるわけではない授業
加納教授も最初はオンデマンドの授業に取り組んでいましたが、やはり文字だけでは伝わらないものがあったといいます。
いままでやってきた授業に近いものを学生たちに提供する方法を考えると、オンラインのリアルタイムな双方向の授業になったということです。また、「画面上に映る最大人数にも上限があり、画面に見えない学生たちの反応はどうなのかなど、見えないものも多いので、難しさはあります」と語る加納教授は、授業で使う資料を、参加者が見られるよう事前にネット上に保存することで、学生たちが授業の前に資料に目を通すことができるようにするなど、さまざまな工夫や可能性の模索を続けています。
リモート授業をうける学生たちの思い
こうしたリモート授業について、授業を受ける側の学生はどう考えているのでしょうか?
大学院生の佐々木裕之さんは「大学の教授が本当に一生懸命やってくださって、通常なら授業が止まってしまうところを、こうやってリモートで授業を続けてくれて感謝します」と大学の取り組みへの感謝を口にしました。他の学生からも、外出自粛が続くなかで授業が受けられることに安心したという声が上がります。
また、教育学部ということもあり、このようなリモートでの授業を将来自分がするかもしれないという視点から、大学の教授たちの工夫する姿勢に学びを得る学生もいました。授業を通じ、オンラインで外部と繋がった経験から、ツールを使いこなせれば繋がれる世界が広がっていく実感を得た学生もいます。
その一方で、やはり対面に比べると学びの質に不安を感じ、今後の展開に課題を感じている声も聞こえてきました。
自分で学ぶ力がより求められるリモート授業
コロナ禍に端を発したリモート授業の広がりについて、今後の教育はどうなっていくのでしょうか?
教務企画課長の戸田克己さんは、「リモート授業は教育改革につなげるチャンスだと考えている」といいます。遠隔授業をそれぞれの大学にあった形で、従来のような対面授業にも導入していくことに可能性を見出していました。
加納教授は授業のリモート化により、「一人ひとりの子どもたちが、自分たちで学んでいける力」がより必要になると考えているそうです。
学生一人ひとりが、それぞれ自分たちの部屋からオンラインでつながっているため、従来のように授業中に友達と相談したり、教授に相談したりできないからです。加納教授は教育の課題として「今後もリモート授業などが進むなか自分で学ぶ意味を考え、自ら学んでいける力を、どの世代においてもつけないといけない」と語りました。
(取材・撮影:モーション・ビジュアル・ジャパン/文:石川玲子/2020年6月取材)
愛知教育大学
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