秋といえば、夏を越して熟成された「ひやおろし」や、できたてのフレッシュな「新酒」など、さまざまな味わいの日本酒が出荷される季節。愛知県西三河にある酒蔵でも、いろいろな種類の日本酒が続々と誕生しているんだとか。今回は、秋の日本酒を楽しみにしている日本酒ファン必見!安城市の「神杉酒造」と西尾市の「尊皇蔵元」が造る、秋におすすめの日本酒を教えてもらいました。地元ならではのおいしさの秘密や、自宅での正しい保存方法などもあわせて紹介します。
地産地消を掲げる「神杉酒造」
最初にやってきたのは、地産地消にこだわった日本酒づくりを行う「神杉酒造」。おいしさの秘密は、なんといっても安城市の米農家さんから仕入れた高品質の酒米。「安城の酒米で最高の日本酒」という志を掲げ、農家さんと二人三脚で日本酒づくりに取り組んでいます。
「腕の良い農家さんは日本酒づくりにおいて信頼できるパートナーなんです」と語る代表の杉本多起哉さん。また、日本酒の成分の85%を占める水は、酒造りにおいて重要な要素。ほんの少しトロッとしたのどごしになるよう、日本酒の水は敷地内を流れる地下水を使用しているそうです。
辛口でも飲みやすい!山廃純米 人生劇場 ひやおろし
ではさっそく、杉本さんにイチオシの秋の日本酒について教えてもらいましょう。1つ目は、神杉酒造の人気シリーズ「人生劇場」から9月9日に発売される「山廃純米 人生劇場 ひやおろし 蔵内熟成瓶囲い」720ml 1,121円。
豊かなコクと酸味が特徴の人生劇場を、じっくりと低温で長期熟成させることによって、ほんのりまろやかな仕上がりに。ストレートもいいですが、ぬる燗でしっぽり楽しむのもおすすめなんだそう。「うなぎや八丁味噌など、濃い味付けの料理とでもおいしくいただけます」と杉本さん。辛口ながらスッキリとした飲みやすさが名古屋飯にもぴったりです。
フレッシュな味わいが楽しめる新酒も
10月下旬には、醸造したまま火入れが一切されていない「新酒」も続々と登場します。中でもおすすめの新酒は?と伺うと、爽やかな甘さとうすにごりからくるほろ苦さが相性抜群な「うすにごり酒 酒人 本醸造 」720ml 1,177円(左)と、酒米由来の本来の旨味・香りが特徴の「しぼりたて純米 無濾過生原酒」720ml 1,353円(中:辛口)、「しぼりたて 本醸造 無濾過生原酒」720ml 1,177円(右:甘口)を教えてもらいました。
どれも安城産酒造好適米『若水』を100%使用しており、ひやおろしとはまた違ったフレッシュな味わいが楽しめます。※価格は全て税込
開封後の日本酒、正しい保存方法は?
日本酒は自宅での晩酌にもぴったり。でも、飲み切れなかった日本酒の正しい保存方法は......?そんな疑問を杉本さんにぶつけてみると、「日本酒の保管は温度管理が命!火入れなどをしていない新酒は必ず冷蔵保存してください。また、日本酒は紫外線に弱いため、火入れがされていないひやおろしなども冷暗所に保存しておくのがおすすめ」とのこと。
小さな温度変化や紫外線が気になるという人は、さらに新聞紙などに包んでおくとより安心なんだとか。これで開封後もおいしさをキープできます。
神杉酒造
「神杉酒造」アクセスマップ
日本酒職人の技術が光る「尊皇蔵元」
続いてやってきたのは、丁寧な日本酒づくりが自慢の「尊皇蔵元」。吟醸造りの日本酒はすべて手作業で酒の仕込みを行っているんだそう。
「品種やその年の出来によって異なる酒米の吸水率を職人の技術で調整しています。そうすることで、仕上がりにばらつきがなく、毎年完成度の高い日本酒を造ることができるんです」という専務の山﨑裕正さん。(右から1番目)職人さんの丹念な作業が、尊皇蔵元のおいしい日本酒を支えているんですね。
季節によって味が異なる日本酒の奥深い世界
尊皇蔵元が販売する商品は、なんと50点以上。同じ銘柄でも季節によって細かくラベル分けされているそうです。
新酒が登場する11月にはフレッシュな生酒、4月には火入れして荒々しさが残る「若」や「夏酒」、火入れ後角が取れてまろやかになった9月の「ひやおろし」、1年以上熟成させた「熟」など、さまざまな味わいが楽しめるようカテゴリー分けされています。また、高温では口あたりがやわらかくなったり、低温ではシャープになったりと、開封後も変化する味わいを楽しめるんだそう。季節や保管温度によって味が変わる日本酒って奥深くて面白い!
華やかな香りが特徴のひやおろし
山﨑さんが1つ目におすすめするのは、重陽の節句・9月9日から期間限定で発売される「月読みの宴 ひやおろし 純米吟醸原酒」720ml 1,595円。厳寒期に醸造した清酒が、一夏を越えて秋口に入ると程よい熟成状態に。華やかな香りと濃醇な味わいが特長です。
2つ目は、純米吟醸酒「夢山水十割 奥 旬 純米吟醸原酒」720ml 1,683円。手作業で行う麹造りと蔵独自のきめ細やかなもろみの管理が、香りの高さと味の濃さを実現。アルコール度数18度以上ながら両方を兼ね備えた日本酒は珍しいんだそうです。※価格は全て税込
好みの日本酒の見つけ方は?
季節ごとに味が異なり、銘柄も多い日本酒。好みの日本酒に出会うには、酒屋さんに足を運んでみるのがおすすめなんだとか。「尊皇蔵元で作った商品は、知識が豊富でしっかりと商品説明してくれる地元の酒屋さんでも販売しています。まずは甘口や辛口など、ざっくりでもいいので自分の好みを伝えてみて」という山﨑さん。
「月読みの宴」は地元のスーパーで、「奥」は西尾市の酒屋さん「やっこ酒店」や「BIGぼとる」などで販売予定です。この秋は、ひやおろしや新酒など、好みに合わせてさまざまな味わいの日本酒を試してみては。(取材:岩井美穂/2021年8月取材)