中高生を中心に人気を博し、累計発行部数2000万部を超えるベストセラー「ぼくらの七日間戦争」をはじめとする「ぼくら」シリーズ。著者の宗田理さんは、西尾市にゆかりのある児童文学作家です。
2023年10月に発表された書下ろし新作「ぼくらの東京革命」のテーマや、作品に対する思いを取材しました。
※2023年12月取材、撮影
1985年から愛され続ける「ぼくらシリーズ」
宗田 理(そうだ おさむ)1928年5月8日、東京世田谷区生まれ。シナリオライターの助手、編集者を経て作家として活動を始めました。
1985年に発刊された「ぼくらの七日間戦争」は映画化されるほどの大ヒット!最近では2019年にアニメ版映画として再リリースされるなど、発刊から約40年が経った今でも愛され続ける大ベストセラー作品です。
今回発表された「ぼくらの東京革命」でシリーズ51作目となりました。
作家人生の礎となった幼少期の思い出
東京の世田谷で医院を営んでいた父が急逝し、母の実家がある一色町に移り住んだのは、小学三年生に進級する春のこと。「男は厳しく育てなければ」と、僕と弟は祖父の元へと引き取られました。
夏休みの課題は、軍馬の飼料になる干し草40キロを集め、リヤカーで学校に運ぶという労働奉仕。作業の合間に、松林の木陰でシャーロックホームズや怪盗ルパン、家にあった文学全集も手当たり次第に読みました。なかでも、読書家だった父が持っていた改造社「現代日本文学全集」の「少年文学集」が宝物でした。
中学を卒業後は、碧南の商業高校へと進学。たまたま見たアメリカ映画にカルチャーショックを受け、「これからは映画の時代だ」と直感し、日本大学芸術学部映画学科へ進学しました。
シリーズ最新作のテーマは「防災」「震災」
今作のテーマである防災・震災は、昔からずっと書きたいと思っていたテーマです。
「人も建物もひしめき合う、この大都会をもしも巨大災害が襲ったら?」構想を練っては、原稿を書きかけて。また、一からやり直して…と、何度も繰り返しているうちに大病を患い、作品になるまで10年ほどの時間を要しました。
いろいろな案を考えましたが、ぼくらシリーズの作品として、彼ららしく「震災をあおって不正を働く悪徳業者をいたずらで撃退しながら、防災や新しいまちづくりについて考える」という形に落ち着きました。
物語を通して伝えたい「防災」とは
防災は、個人で取り組めるものから、行政や社会全体で取り組まなければならないものまで、理想を言い出したらきりがありませんが、まずは一人ひとりの意識が大切だと思います。
特に現代では、「壁一枚隔てた隣の部屋にどんな人が住んでいるのか知らない」などということはザラにあります。「震災があった時に、家の中で動けなくなっている人に誰も気づけない。助けられたはずの命が失われる」そんなことがあってはいけないと思うのです。
あらゆる世代が力を合わせ、互いに思いやり協力して助け合うことこそが、防災の最強の武器になると思います。
「ぼくらシリーズ」を通して宗田さんが読者に伝えたい思い
いつの時代も悪い大人が権力を握れば、正直者や弱い者は利用される。それを許して、ただ指をくわえてみているだけではいけない。挑んでほしい。というのが、小説を通して伝えたいことです。
暴力に訴えるようなやり方ではなく、「いたずら」で悪い大人をからかって面白おかしくやっつける。これは、僕のこだわりです。
大人は経験も知識も豊富ですが、ただすべてを信用するのではなく、自分自身の頭で考え行動する。そういう子どもたちであってほしいと思います。