おうちで子どもと過ごしていると「この絵本読んで!」と子どもから無邪気に読み聞かせをせがまれることがあります。
一方で、「読み聞かせは苦手」「子どもが絵本に集中してくれない」などの悩みを抱えているママ・パパも多いのではないでしょうか。
今回は、親子の絵本に関する悩みを解決するため、愛知県安城市にある絵本専門店「花のき村」の店主・伊藤義明さんに、絵本選びのポイントや親子で絵本を楽しむコツをお聞きしました。
※2021年4月取材・撮影、2023年10月営業時間など確認
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多彩な絵本がずらり!絵本専門店・花のき村
絵本を中心に、童話や保育関連の本を取り扱う花のき村。ロングセラーから最新作まで、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめる絵本がずらり!多彩なラインナップはさすが絵本専門店です。
「好きな絵本が探しやすいよう、できる限り表紙が見えるように並べています」と話す伊藤さん。子どもと一緒に絵本を選んだり、プレゼント用の絵本を探しにきたりするお客さんのことを考えて、レイアウトした本棚からは、伊藤さんのこだわりがうかがえます。
奥深い絵本の世界に魅せられて
2023年で創業39年を迎える花のき村。店主の伊藤さんが絵本に特化した書店をオープンさせたのには「わざわざ足を運びたくなるような個性的な本屋さんを開きたい」という思いがあったからだそう。
「絵本の一番の魅力は、絵と文で何でも表現できること。そして、子どもから大人まで楽しめること。私もその奥深い世界にすっかり魅了されました」と語る伊藤さん。それではさっそく絵本の読み方、楽しみ方を教えてもらいましょう!
絵本選びは子どもの好奇心を大切に
まずは絵本選びのポイント。絵本を選ぶときに最も重要なのは、子どもの好奇心を引き出してあげることなんだそう。子どもは無限の好奇心を持っています。それを引き出すきっかけになるのが絵本。子どもが興味を持った絵本を選ぶことで、好奇心が広がり、結果的に言葉の覚えにつながったり、集中して絵本を楽しんでくれたりするんだとか。
また、絵本をプレゼントするなら、ロングセラーの絵本がおすすめ。長く愛されている絵本には相応の理由があり、誰に贈っても喜んでもらえる確率が高いといいます。
読み聞かせのコツは、読み手も楽しむこと
伊藤さんは、多くの子どもたちに絵本のおもしろさを伝えるため、近郊の幼稚園や保育園で読み聞かせも行っています。絵本を読むときは、子どもたちと同じくらい自分も楽しむようにしているんだとか。
感受性が豊かな子どもには、こちらの温度感もすぐに伝わってしまうもの。子どもが興味を引くような言葉を補足したり、効果音や擬音を強調したりと、物語のおもしろさが伝わる工夫を凝らすことで、自分自身にとっても読み聞かせの時間が一気に楽しくなるんだとか。何よりも読み手が楽しむことが一番のポイントなんですね!
おすすめの絵本 1.スーホの白い馬
プレゼントにもぴったりのロングセラー絵本の中から、伊藤さんおすすめの4冊を教えてもらいました。まず1冊目は、「スーホの白い馬」福音館書店(再話:大塚勇三/画:赤羽末吉)。
モンゴルの民族楽器「馬頭琴」の由来にまつわる物語で、小学校の教科書にも載っている名作です。「スーホが広大な地平線を駆け巡る姿が、横長の絵本に臨場感たっぷりに描かれています」と伊藤さん。かつて読んだことのある名作も、大人になってから読むとまた新たな気づきがあるかもしれません。
おすすめの絵本 2.キャベツくん
続いての絵本は「キャベツくん」文研出版(文・絵:長新太)。
主人公のキャベツくんと出会った動物たちがお腹が空いたといってキャベツくんを食べると、なんと体の一部がキャベツに...!繰り返しのストーリーで、キャベツくんと動物たちが繰り広げる愉快な会話に子どもたちも夢中に。
伊藤さんによると、ちょっとばかげているような面白おかしい世界観を、インパクトのある絵の色合いとユニークなキャラクターで表現するのが長新太さんの真骨頂なんだとか。
おすすめの絵本 3.旅の絵本シリーズ
3冊目は、繊細なタッチの絵が目を引く「旅の絵本」シリーズ全9作 福音館書店(著:安野光雅)。
絵だけで展開されたページには、世界各地の町並みが描かれています。ページをめくるごとに異国の景色が広がり、子どもの想像が次から次へと世界を羽ばたいていくかのよう!
イギリスではビートルズ、アメリカでは自由の女神など、その土地の有名人や観光名所が潜んでいるのを探すのも楽しみ。旅気分が高まり、大人もワクワクしながら読むことができます。
おすすめの絵本 4.オオカミがとぶひ
最後に紹介する絵本は「オオカミがとぶひ」イースト・プレス(著:ミロコマチコ)。
2012年に出版され、「日本絵本大賞」を受賞したミロコさんのデビュー作です。風が強く吹いていることを、「だって、オオカミがかけまわっているから」。雷が鳴っている日は「ゴリラがむねをたたいているんだ」と、自然現象や身のまわりのできごとから感じたことを、ダイナミックな動物の絵とリズミカルな言葉でユニークに表現。
子どもにとって絵本は、遊びのひとつ
店頭では、本の選び方の相談にのっているという伊藤さん。
近所のはなし・編集部の樅山が「絵本ではなく図鑑を読んでと言われることが多いんですが、図鑑って読み聞かせするものなんでしょうか」と悩みをぶつけてみると、「絵や写真を一緒に見るだけでも子どもは楽しめるし、そこに書かれている文字を読んであげることで、好きなものへの好奇心が深まります。大切なのは、絵本の内容よりも親子で一緒に楽しむ時間。そして、絵本を「遊び」のひとつとして捉えること。遊びの中からしか好奇心は生まれませんから」と優しくアドバイスしてくれました。
子どもの好奇心をそそる絵本ギャラリー
花のき村の隣には「絵本ギャラリー」があります。好奇心をくすぐる絵本を紹介していきたいという目的で作られたギャラリーです。表紙が見えるよう工夫された展示で、その数はなんと300点以上!
さまざまな企画が予定されていますが、まずはロングセラーの絵本から手にとってみたり、子どもが興味を示した絵本を楽しんでみたりと、伊藤さんから教えてもらったコツを参考に親子で絵本を楽しんでみては。(取材:岩井美穂・2021年4月取材、2023年10月営業時間等を確認)