愛知県碧南市にある町工場「斉藤鉄工所」では、2023年で創業77年にもなる歴史で培った高い技術力と、社長・斉藤さんのユニークな発想を掛け合わせたブランド「KIHO(キホー)」を立ち上げました。
文具や雑貨、ビジネスアイテムなどの毎日使いたくなるアイテムから、大切に残しておきたいメモリアルなアイテムまで幅広く手掛け、特に「くの字」型に曲がった文鎮「革【KAKU】」はふるさと納税でも人気の返礼品なのだそうです。
「自分が楽しんでやれることが一番だと思っています」と話す斉藤さんに、「KIHO」のブランドの魅力とこれまでの思い、今後について尋ねました。
※2023年8月取材・撮影
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素材もデザインも多種多様で数えきれない!
お話を伺ったのは斉藤鉄工所の3代目社長・斉藤英和さん。これまで製作してきたアイテムは、かわいらしいクリップやキーホルダー、名刺入れといった日用品から、端午の節句の兜飾りや記念のプレートなどのオーダーメイドアイテムまで、斉藤さんの手にかかればどんな素材やデザインも実現可能!
具体的な製品の数を尋ねると、「数えきれないですね!」とのお答えが!
アイデアからデザイン、切削加工まで全て1人で行う斉藤さんは、ふと思い立ったときや、お客さんの声をもとにして「自分が使いたいと思うもの」という目線でいろいろな製品を生み出しているのだそうです。
コロナを契機に事業転換。思いを込めた「KIHO」が誕生
「斉藤鉄工所」は3代続く町工場として75年以上の歴史を持ちます。斉藤さんは33歳のときに社長を継ぎました。
転機が訪れたのは今からおよそ3年前。ふるさと納税の返礼品の話が持ち上がりました。斉藤さんは「せっかくなら、誰かに言われたことをやるのではなく、自分が思い描いたものを作りたい」という思いから、文鎮「革【KAKU】」を製造。その後、思い切って事業を転換させ、オリジナル製品「KIHO」の製造・販売を始めたのです。
「KIHO」という名前は、亡くなった斉藤さんのお母さんの戒名から付けたのだとか。偶然、斉藤さんとお母さんが習っていた書道の先生の雅号でもあったため「これだ!」と即決だったそうです。
自身の経験をもとに誕生した、新しい文鎮「革【KAKU】」
文鎮「革【KAKU】」には、斉藤さんが学生時代に経験した出来事が隠されています。子どもの頃から書道が得意だった斉藤さんですが、字を書くときに不便を感じていたそうです。
「文鎮って、普通はどれもだいたいまっすぐで、右斜め上に置くと紙いっぱいまで字が書けないんです。それがずっと不便で、紙の隅までしっかり書ける文鎮があればいいのにと思っていました」
そんな自身の経験をもとに、くの字に曲がった文鎮を開発。「文鎮を革命したい」という思いを込めて命名しました。その後、ありそうでなかった形と使い勝手のよさが評判となり、人気の返礼品に。角を丸く加工することで、しっとりと手になじむような感覚や、見た目のあたたかみにもこだわりました。
飾る?使う?ユニークなペーパーウェイト「鏡【MOCHI】」
自動車部品製造業で長年培った切削加工技術を駆使して、こんなにユニークな商品も誕生!
「鏡餅は毎年買うものですが、中の餅は食べないと腐ってしまいますし、外側は飾り終わったら捨ててしまいますよね。せっかくなら飾っても使ってもいい鏡餅がいいなと思い、ペーパーウェイトを作ってみました」と斉藤さん。
本物の鏡餅の形状を計算し、独特の丸いフォルムを手のひらサイズで見事に作り上げています。台座は箱としても使えるので、収納時も簡単。これなら、「鏡餅を買い忘れた!」なんていう心配とも無縁ですね。
ちなみにこちらは「鏡」と「MOCHI」で「鏡【MOCHI】」という名前になったのだそうですよ!文鎮のネーミングにはそれぞれ、こだわりと思いが込められていることが伺えます。
自分用にもプレゼントにもぴったり♪豊富なペーパークリップ
続々と新商品が生まれているのが、ペーパークリップ。スポーツ系、季節のお花、かわいらしい表情のワンちゃんや、メッセージの入ったものなど、色とりどりの商品がそろいます。
ペーパークリップの誕生は、お客さんから相談を受けたのがきっかけなのだとか。
実際に作って提案してみたところ、デザイン性の高さも相まって、お客さんは大満足!その後、「自分の店のロゴで作ってほしい!」「こんなデザインがあったら嬉しい!」といった声も多く聞かれるようになったそうです。
軽くて薄いのに紙がしっかり留まるので、使い勝手も抜群!自分用にたくさん揃えてもいいし、友達の好みを踏まえてプレゼントしてもよさそうです。オーダーメイドを希望する場合は気軽に問い合わせてみましょう。
※最小発注数200個80円~。赤・青・黄・緑・白・グレー・黒・茶の8色から4色をセレクト可能。クリップデザイン料として別途3,000円~。
パズルとしても楽しめる!「3D立体クリップストラップ」
クリップとして使えるだけでなく、立体的に組み立てることでストラップにもなるアイデア商品も!子どもも大人も夢中で挑戦してしまいますね。
こちらの商品は子どもに大人気。スイカのほかにいちごもあり、かわいらしいフルーツのモチーフは持っているだけで目立ちそうですね。
こういったアイデアも、「こういうものがあったら喜んでもらえるかも」という思いから湧き出たもの。斉藤さんは、離れて暮らす息子さんに「こういうのどうかな?」と意見を求めることもあるそうで、親子で相談を重ねながら、何度も試作を繰り返して商品にしています。
自分が楽しんでやれることに全力で取り組む
現在、マルシェやイベント出店などでも人気の「KIHO」ですが、もとは75年以上続いた町工場。以前の仕事から脱却して新しい仕事を始めることに対して、不安はなかったのでしょうか。
「これまでは、元請けから送られてくる図面をもとに製品を作っていました。言い換えれば、依頼に対して忠実にやるのが自分の仕事だったのです。でもいつしか、自分のやりたいことをとことん追求する生き方もいいかもしれないと思ったんです。幸い、家族にも背中を押してもらえて、今では思う存分『KIHO』の商品開発に勤しんでいます」
実は「斉藤鉄工所」という名前も変えてしまおうかと思った時期もあったそうです。しかし、会社が長年地域に根ざしてきたという事実や、創業者であるおじいさんの思い入れも受け継ぎたいという思いが強くなり、名前はそのまま残しました。
店頭やネット販売、イベントにて購入を
「KIHO」は現在、「斉藤鉄工所」の店内や碧南市のふるさと納税、ハンドメイド作品の通販サイト「Creema」、マルシェやイベントで購入することができます。お店を訪れる際は、会社の向かいにある駐車場へ停めましょう。
2023年12月9日(土)、10日(日)にポートメッセなごやで行われる「クリエーターズマーケットvol.49」にも出店が決まっているので、そちらにもぜひ足を運んでみて。
(取材:光田さやか/2023年8月取材・撮影)