愛知県碧南市で白だし、白しょうゆの製造・販売を行っている「七福醸造株式会社」は、日本で最初に白だしを開発した老舗醸造メーカーです。
今ではスーパーで気軽に手に入れることができる白だし。でも、その上手な使い方は知らないもの。普通のだしとの違いは?どんな食材・レシピに最適?メーカーだから知っている意外な使い方は?白だしユーザーが気になっていることを聞いてきました!
碧南市にある工場「ありがとうの里」に潜入!
碧南市山神町にある、七福醸造の工場「ありがとうの里」。取材班を笑顔で出迎えてくれたのは、工場長の鈴木貴士さんです。「この工場では白だしと白しょうゆを作っています。どちらも碧南の特産品なんです!」という鈴木さん。
ありがとうの里は、工場を訪れる人に「ありがとうのお土産」を持って帰ってほしいという思いから名づけられました。工場見学では、七福醸造が取り組んでいる社会貢献活動についての説明や、白だしの原料・製法について学ぶことができます。
白だしはなぜ生まれた? 誕生秘話
白だしが誕生したのは、岐阜県の料亭で働いていた板前さんからの声がきっかけでした。茶わん蒸しを作るためにはだしが必要ですが、何百食分となるとだしを引くためにかなりの時間がかかってしまいます。さらに、引きたてのだしは熱く、卵料理に使うためには冷まさなければいけません。そこで、白しょうゆにあらかじめだしを加えたものを開発してほしいとリクエストがあったのです。
板前さんに納得してもらう味へと仕上げるために、「日本一の原料を集めよう」と奮起。大分県産のどんこしいたけや、北海道産の昆布、鹿児島県の本枯節(カツオ節)などを使ったこだわりのだしを完成させました。約40年前の開発当時から、今でもその原料は変わっていません。
白だしの味の土台が白しょうゆ
白だしのベースになる白しょうゆは、一般的なしょうゆに比べて小麦の割合が高く、うまみよりも甘みが強いのが特徴で、素材の味をそのまま引き立てます。また、色がつきにくいので素材の色を生かすことができ、料理の見た目を損なわないことから、プロの料理人に好まれてきました。
できたての白しょうゆを発酵タンクから直接注いでもらうと、小麦に由来するフルーティーな香りに驚きます。口に含むとやや塩辛く感じますが、その後、甘みが口の中に広がります。そして発酵の後の熟成期間で味がまとまり、よりまろやかになっていきます。
だしは風味が落ちないうちにブレンド
だしは冷却し、風味が落ちないうちに白しょうゆとブレンドしていきます。ありがとうの里では、1日で最大3万本を製造していて、最後は人の目で異物が入っていないかをきめ細かくチェック。職人さんの真剣なまなざしが、品質を徹底的に守っているのがわかります。
だしの製法の詳細や原料の割合は企業秘密。鈴木さんは「今は技術が進化していて、だしを作るのにもさまざまな方法があります。でも、私たちのテーマは安心安全。今も開発当初と同じように材料を火にかけて、お湯でぐつぐつ煮ています。ご家庭と同じような方法ですよ」と話します。
見学の後は試食もOK!
白だし・白しょうゆに詳しくなったところで、実際に白だしを使った料理を試食!工場見学に参加すると、卵焼き専用に開発された白だしを使った卵焼き、白だしと和えて作ったきゅうりの浅漬け、そして白だしをお湯で割ったお吸い物をいただくことができます。「きゅうりの浅漬けは、普段白だしを使っている方からも『こんな食べ方があるんだね』と驚かれます」と話すのは、試食の調理を担当しているスタッフさん。
作り方は簡単。きゅうり2本を乱切りにし、大さじ1杯の白だしを混ぜ合わせて10分置くだけ。漬けすぎると塩気が強くなってしまうので注意が必要です。きゅうり以外にも大根や白菜、ナス、トマトなど…どんな野菜にも合うそうです。白だしだけで味をつけたとは思えないほど、野菜のうまみがぎゅっと閉じ込められた簡単浅漬け。一度試してみては。
教えて! 白だしのQ&A①
ここで、白だしユーザーが気になっていることを、工場長の鈴木さんに直接聞いてみました!
取材班「そもそも、白だしと普通のだしの違いってなんですか?」
鈴木さん「一般的なだしはだしだけで使うのではなく、いろんな調味料と合わせる必要がありますが、白だしは白しょうゆが入っているので、1本で味が決まります!手間いらずで使いやすいです」
取材班「白だしを使うときのコツはありますか?」
鈴木さん「色が薄いので、ついついたくさん入れてしまう人がいます。色は薄いですが、味は濃く仕上がっていて、しっかり味はついています!味を確かめながら少しずつ使っていただいた方がいいと思います」
教えて! 白だしのQ&A②
取材班「白だしを作っている皆さんだからこそ知っている使い方はありますか?」
鈴木さん「僕の一押しは卵かけご飯ですが、最近は冷ややっこも推しています。豆腐に少しかけるだけでもおいしいですよ。ほかにも、唐揚げの下味や、ドレッシング代わりに使っていただくのもいいですね」
取材班「ドレッシングですか!?」
鈴木さん「オリーブオイルと白だしを1.5:1の割合でよく混ぜて、サラダにかける食べ方もおすすめです!」
取材班「最後に、白だしとめんつゆの違いを教えてください!」
鈴木さん「これ、よく聞かれるんです(笑)。めんつゆはみりん、砂糖が入っている分、白しょうゆよりも甘みが強いです。なので、めんつゆの代用として白だしを使う場合には、みりんを加えるといいですね」
白だし以外にも調味料がズラリ
七福醸造では、白しょうゆをベースにしたさまざまな商品を開発しています。卵かけご飯用、卵焼き用、めんつゆも。「やさしい味の野菜白だし」は、だしのメインであるカツオの代わりに6種類の野菜を使った、動物性原材料一切不使用の白だしです。お湯で薄めて飲んでみると、まるでコンソメ!
「ポトフやピラフ、スープ、スパゲティなど洋食にぴったりです」という鈴木さん。「試食や味見もできるので、ぜひ一度見学にきてほしいです!」とアピールしていました。
初めて白だしを作った工場だから
今や全国どこのスーパーでも手にいれることができる白だし。鈴木さんは「実は、白しょうゆにだしを加えて白だしを作っているメーカーは意外に少ないんですよ」と話します。
濃口しょうゆを脱色していたり、淡口しょうゆを使っているメーカーもあるんだとか。メーカーによって、だしの原料もさまざま。一口に白だしと言っても、それぞれ個性があるんですね。
碧南市が全国に誇る特産品の白だし。七福醸造の“元祖”白だしを、一度味わってみては。
7月29日は「白だしの日まつり」を開催予定
7月29日は白だしを日本で初めて開発した七福醸造にちなみ、「白だしの日」として一般社団法人・日本記念日協会に認定、登録されています。ありがとうの里では、毎年この日に「白だしの日まつり」を開催していて、白だしを使った料理のふるまいや販売などを行っています。
2022年に3年ぶりに開催され、ありがとうの里に地元の人の笑顔が戻りました。2023年も開催予定。詳しい情報は公式HPをチェックしてみて。
七福醸造株式会社 碧南工場 ありがとうの里
場所:愛知県碧南市山神町2-7
営業時間:9:00~16:00(入場は15:00まで)
定休日:年末年始、お盆(土曜、日曜、祝日は製造は行っていませんが見学は可能です)
電話:0566-41-1508
公式サイト