夏休みの宿題の中でも頭を悩ませることが多い「自由研究」。子どもに「自由研究って何すればいいの?」と聞かれたら、あなたは何と答えますか?なかなか難しい質問ではないでしょうか?
自由研究はその名の通り、「自由」に「研究」すれば題材は何でもいいのだそう。「とはいえ何をすればいいか分からない」とお困りなら、ぜひ西三河の豊かな自然をテーマにした自由研究をしてみては?そこで今回は、刈谷市にある愛知教育大学 教育学部 理科教育講座准教授・島田知彦さんに、西三河エリアならではの自由研究について、アドバイスをお聞きしました。
※2022年8月取材・撮影、2023年7月イベント開催日を更新
子どもの頃からカエルが大好きな島田准教授
写真提供:島田知彦
島田先生は自然史が専門。特にカエルに関する研究を行っており、これまで東南アジアの各地で新種のカエルを発見するなどグローバルに活躍しています。子どもの頃からカエルをはじめとした両生類や爬虫類が好きで、数えきれないくらいの生き物を飼った経験があるそうです。
「カエルの無表情な感じがかわいいです。飼っていると、飼い主にしかわからないくらい微妙に懐くんですよ...」と島田先生。
子どもが主体的に考え、調べることが大切
写真提供:島田知彦
島田先生は「自由研究は、本当に何でもいいんですよ」ときっぱり。普段の学校では「何かを教わる」ことが多いので、子どもが主体的に考え、調べるという経験は貴重です。
「私は小1の頃、近所の空き地に行ってそこで見つけた生き物を記録するという自由研究をやりました。ただノートに記録しただけですが、自分で興味のあることを見つけ、調べたことに大きな意味があって。その経験が今の自分に続いている気がします」と教えてくれました。
自然観察オススメその1:佐久島
自然が豊かな愛知県西三河地方は、生き物観察などの自由研究にぴったりのエリア。西尾市の佐久島は実習の授業でも訪れるスポットなのだそう。
「船にのって島へ行くというだけでワクワクしませんか?子どもは非日常を体験するだけで興味を持ってくれます。佐久島は海も山もあり、人が少ないので生き物を手軽に見られます。蝶など虫も多く生息しているので、歩き回るだけでも生き物に出会いやすい!」と、島田先生オススメのスポットです。
自然観察オススメその2:豊田市自然観察の森
写真提供:豊田市自然観察の森
ちょっと足を延ばすなら「豊田市自然観察の森」もオススメだそうです。ここは森の中に観察路が整備されており、人が訪れても自然環境が保たれるよう手入れされた里山です。森の中には昆虫はもちろん、野鳥、哺乳類、両生類、爬虫類、魚類などなど、さまざまな生き物を観察することができます。
こちらでは受付で許可書を記入すれば、捕虫網の使用は可能です。しかし山野草や生き物の持ち帰りはできません。捕まえて観察した生き物は元の場所にかえしてあげてくださいね。
自然観察オススメその3:近所のセミ
遠くへ行かず、自宅付近でも大丈夫。例えば「セミ」。生きている間は飛ぶのでどこから来たのかわかりませんが、セミの抜け殻は「そこで繁殖した明らかなサイン」。抜け殻を調べればどの種類のセミがどこに分布しているのかなどがわかります。
島田先生によると「愛知県ではクマゼミとアブラゼミが圧倒的に多いのですが、最近の気象変化によってその勢力図が変わってきています」とのこと。他にも山へ行って別のセミを観察したり、セミの鳴き声がどの時間帯に聞こえてくるかなどを調査したりと、調べることはいっぱいありそうです!
自然観察オススメその4:蚕
近くの川沿いにクワの木が自生しているのなら、蚕を飼うのも一つの手段。この日は先生のお子さんが飼っているという蚕を見せてもらいました。「しゃくしゃく...」という音を立てながら一心不乱にクワの葉を食べる蚕たち。狭い場所にまゆを作る習性があるため、まゆを作りそうになったら箱状の場所に移してあげているそう。
広いところだと、ある蚕がまゆを作った後、そのまゆの陰になる場所に別のまゆができて団子状になることもあるそうです。
子どもキャンパス!愛教大内の自然観察実習園
子どもの声が聞こえるキャンパス・地域から頼られる大学を目指す愛知教育大学は、東門近くに「自然観察実習園」もあります。採集禁止の札がかかっている植物は持ち帰れませんが、そこにいる昆虫類は節度を守っていれば採集OKとのこと。
取材当日もバッタやカマキリ、タマムシなどなど、多くの昆虫に出会うことができました。自然観察実習園の隣には森のように広い自然観察園もあり、散歩がてら訪れる親子も多いそう。最も近い駐車場は愛知教育大学駐車場 P8です。
ものづくりのおもしろさを体験できるイベント
写真提供:愛知教育大学
愛知教育大学では、地域の子どもたちが科学実験やものづくりの楽しさを体験できるイベントを行っています。教員志望の学生や教員などによるブースがいくつも出展され、さまざまな実験に幼児から参加できるものも。
毎年大人気のイベントで、多くの親子連れでにぎわうそう。2023年度の「科学・ものづくりフェスタ」は11月18日(土)に開催予定なので、ぜひ参加して子どもの好奇心を刺激してみては。
高校の新科目「理数探求」につながる自由研究
地域によっては提出自由なこともある自由研究ですが、島田先生はぜひトライしてほしいと話します。高校では2022年から「理数探求」という科目が新設されており、生徒が課題を自ら設定し、観察や実験、調査を行って探求します。自ら考える力や好奇心を育むための授業ですが、夏休みの自由研究はその第一歩。
「保護者の方は、『あれをやったら』と教えてしまうのではなく、子どもの興味のあることが何なのか一緒に探すスタンスが大切です」と島田先生。残りの夏休みは子どもの好奇心を引き出す時間にしてみては。
(取材:河合春奈/2022年8月取材・撮影、2023年7月イベント開催日を更新)