「人形のまち」として知られる高浜市吉浜地区。ここに「高浜茶屋 吉貴」という、等身大歌舞伎人形の展示館があるのをご存じですか?
等身大サイズの人形歌舞伎が見られるのは全国でも珍しく、人形好きや歌舞伎好きの人々が全国から訪れているそうです。そもそも、等身大サイズの人形というものも、あまり見たことがないかもしれません。実際に訪問して詳しくレポートします!
※2022年4月取材・2024年4月基本情報を確認。お出かけの際は最新情報をご確認ください。
全国各地から人形ファンがやってくる
高浜茶屋吉貴があるのは、名鉄「吉浜」駅から徒歩3分の場所。そのため全国各地から電車を乗り継いでやってくる熱烈なファンも多いようです。駐車場もあり、車でのアクセスも良好。コロナ禍の前はバスで訪れる団体客も多かったそうです。
江戸時代の劇場風な外観で、壁には歌舞伎の一場面を描いた大きな絵が飾られており、古典芸能を鑑賞する気分を高めてくれます。
人形師・花雲斎紫峰による人形芸術が結集
館内に入ると、スタッフの神谷京子さんがお出迎え。
「ここは人形師の花雲斎紫峰(かうんさいしほう)が、5年以上をかけて作り上げた人形芸術の展示館です。1体を作るのに約3ヶ月。お弟子さんは2人いましたが、基本的には人形師が一人でコツコツと作っていきました。型を作って、胴体を作って、髪を結って、衣裳を着せます。歌舞伎が好きだったようで、2階の舞台は歌舞伎の名場面を再現しています」と教えてくれました。
絢爛豪華な花魁道中!どれも表情豊か
1階に飾られている等身大歌舞伎人形は、花魁道中を表現しています。4人の遊女と、提灯などを持つ男衆の姿が。
じっと観察していると、こっちの女性は優しそうだな、こっちの女性は今風の美人だな、こっちの女性は気が強そうだな...などと想像が膨らみます。遊女の後ろにいる男衆もさまざまな表情を見せており、この人は腕っぷしが強そうだとか、この人はこの遊女に惚れているのでは?などと想像も...。衣裳や小物は本物を使用しているため、迫力満点!
芝居小屋そっくり!77体の人形がお目見え
いよいよ2階へ。人形歌舞伎の鑑賞には入場料500円が必要なので、スタッフさんにお声掛けを。
舞台の脇には観客席があり、たくさんの見物客である人形が並んでいます。どうやらみんな、歌舞伎が始まるのを今か今かと待ちわびているようです。お殿様もいれば普段着の着物を着た庶民風の人もいて、顔の作りや表情も一体ずつ違います。お年寄りの人形はシワの寄り方もリアル!
舞台には黒衣(くろご)や後見の姿も見え、リアリティを追求しています。イス席とタタミ席があり、好きな場所で鑑賞できます。
代表的な歌舞伎の名場面が次々と登場
舞台が明るくなると、いよいよ歌舞伎のはじまり。初めは歌舞伎の代表的な演目である「連獅子」の一場面を表した等身大歌舞伎人形が登場します。左側の赤い髪の人形が仔獅子、右側の白い髪の人形が親獅子の精を表しているそうです。音声解説が流れ、どんな話なのかを教えてくれるので、歌舞伎に詳しくなくてもご安心を。
その後も遊女との悲恋を描いた「梅川忠兵衛」、「新口村」などの歌舞伎の一場面が次々と登場し、「歌舞伎を鑑賞してみたいな」という気分に。
トリは五右衛門!「絶景かな」の名シーン
クライマックスは大泥棒・石川五右衛門。館内アナウンスに促されて後ろを振り向くと、南禅寺の楼門の欄干に片足をかけて「絶景かな」と見得を切る場面が。色鮮やかな楼門や桜の演出もあり、五右衛門が満開の桜を眺めて語った様子がありありと伝わってきます。
五右衛門の下に展示されているのは、歌舞伎役者たちの舞台準備の様子を表現したもの。役者たちの普段の顔が見られる、貴重な場面です。
まるで本物!人形師本人が観客席に
観客席を見ていると、一瞬「本物の人間!?」とびっくりするほどの人形を発見しました!他の人形は江戸時代の衣裳や髪型をしていますが、この人形だけは現代風で眼鏡もかけています。腰には「人形」と書いた前掛け。「もしかして人形師本人?」と思い神谷さんに聞いてみると「その通りです」とのお答えが。ご本人が自分自身の人形を作ったそう。表情はもちろん、髪の質感や肌の質感もリアルにできていて、ご本人にもそっくりだったそうです。
愛らしい赤ちゃん人形の眠る様子に癒される
2階の舞台を満喫したあとは、1階のお土産コーナーへ。昔懐かしのおもちゃやお菓子、和雑貨などさまざまな商品がありますが、思わず「かわいぃ~」と声を発してしまったのがこちらの人形。「吉貴オリジナル人形 上向ねんね」(1,000円・税込)です。脚や腕を曲げてすやすやと眠る赤ちゃん人形は、純真無垢な表情で見ているだけで癒されます。
神谷さんは、「この『高浜茶屋 吉貴』を、一日も長く続けていきたいです。これから先も、多くのお客様に人形を見て楽しんでいただければ」と笑顔を見せます。「高浜茶屋 吉貴」を訪れたら、あなたも人形芸術の奥深さを感じられること間違いなし!(取材:河合春奈/2022年4月取材・2024年4月基本情報を確認)
高浜茶屋 吉貴(よしき)
場所:愛知県高浜市屋敷町1-6-5
駐車場:あり
営業時間:11:00~16:00
電話:0566-54-0588
休み:なし ※臨時休業あり
2階入場料:500円
高浜茶屋 吉貴 公式HP
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