ケースに並ぶ豊富なメニュー。ここは一体?
愛知県碧南市の住宅街にある店。入り口のショーケースに並ぶのは、うどん、スパゲッティ、かつ丼、オムライス、ラーメン...。「ここは一体何屋さん!?」。
昭和10年創業の老舗食堂「大福」は、大きな道から一本入った場所にあるにもかかわらず、ランチ時になるとお客さんが続々と訪れる、地元の人気店です。気になる店内を覗いてみると...。
たくさんのお客さんと笑顔であふれる店内
昭和の雰囲気漂う店内は、たくさんのお客さんで満席!お客さん同士も顔見知りが多く、挨拶をしたり情報交換をしたりと会話が弾みます。常連さんばかりかと思いきや、知多半島から訪れたという方も。
「安いし、早いし、何よりおいしい!すべて手作りだから、安心して食べられるのも魅力。昨日も来ましたよ」とお客さん。この言葉を聞いていたまわりのお客さんたちも「そうそう!」と納得の表情です。
1年通して同じメニューはない、日替わりランチ
取材中、お客さんの9割が注文していたのが日替わりランチである「おこのみ定食(650円)」。メインのおかずにご飯、味噌汁、小鉢3つ、食後のコーヒーがついたボリューム満点の定食です。
「毎日11時頃にSNSで『おこのみ定食』の内容をチェックするのが楽しみ!」と常連さん。ちなみに昨日はお刺身定食、一昨日はうどん定食だったのだそう。
「同じようなメニューを食べてもつまらないでしょう?『おこのみ定食』は365日すべて違う内容。今日食べたものは、もう出合えないかもしれないよ!」と大将。「おこのみ定食」の人気の秘密は、ボリュームの多さとバリエーションの豊富さですね。
洋食屋で腕を磨いた大将自慢のメニュー
大将自慢のケチャップライスの上に、ロースカツが4枚と目玉焼き、野菜を乗せ、自家製デミグラスソースをたっぷりとかけた店の看板メニュー「大福ランチ(790円)」。
こだわりのデミグラスソースは、毎日継ぎ足しをして先代の味を守っているのだとか。ケチャップライスは、ふわっと仕上げるのがポイント。洋食屋で修業した大将だからこそ出せる、どこか懐かしい味わいです。
創業当時から変わらない、秘伝の出汁
実は、「大福」は元々、うどん屋。創業当時から変わらない出汁は、大将が毎日、ムロ出汁とササ出汁という2つの出汁をブレンドして作っているのだそう。
「季節によって配合を調整して、夏はさっぱりと、冬は濃い目に仕上げます」。写真は「玉子とじ(600円)」ですが、ほかにも「鳥なんば(620円)」、「カレーうどん(620円)」、「みそなべ(750円)」など種類豊富。どれにしようか迷ってしまいますね!
強いこだわりと確かな腕で作る料理は絶品!
「大福」を先代から受け継ぎ、今も守り続けている大将の深見隆さん。なんと今年で79歳!
「55年前に親父から店を受け継ぎ、妻と2人でがむしゃらにやってきたけど、途中で妻が突然亡くなってしまって。それからは、娘や孫、パートの皆さんに支えられて、ここまでやってこれました」。
最近腰が曲がってきて、体力もなくなってきたな~なんて言っていた深見さんですが、厨房に立つと表情は一変。キリッとした表情が素敵ですね!
店を明るく照らす太陽のような明朗な人柄と笑顔
深見さんの奥さんが亡くなってから、一緒に店を守ってきたのが娘の肥子展子さん。
「父から『60歳になるまで手伝ってくれないか』と言われて。実の親子ということもあり、ケンカも数え切れないくらいしました。でも、どんなに時代が変わっても"値段は上げない、味も落とさない"とこだわりを持って仕事をする父の姿を見て、また友達や地域の皆さんにも支えてもらいながら今日までやってこれました。感謝しています」。
美人で明るいお母さんが自慢だったという展子さん。今では展子さんが、「大福」にとって太陽のような存在になっています。
SNSを使っておじいちゃんの店を盛り上げたい!
「厨房に立つおじいちゃんはとってもかっこいい!」と話すのは孫の肥子裕美子さん。
仕事をしながら、休みの日に店を手伝っています。裕美子さんは、SNSを使っておじいちゃんの料理をアップし、情報を発信。そのおかげで、近所の方だけでなく遠方から足を運んでくれる方も多くなったのだそう。
「私も大好きなおじいちゃんの味を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。休日はよくおじいちゃんとデートに行きます。明日は電気屋さんに行く予定!笑」。大将も裕美子さんとのデートを楽しみにしている様子でした。
"昭和の味"を気軽に食べに来てほしい
「昔ながらのどこか懐かしい味をこれからも変わらずに作り続けます。気軽に食べに来てほしい」と話す深見さん。
「娘と孫のおかげで、79歳になる今も元気に仕事ができています。『娘たちを働かせすぎ!』って天国のお母ちゃんに怒られちゃうな」とおちゃめな一面も。親子3代でおじいちゃんの味を守る「大福」。地域の人々に愛される地元の人気店として、これからも走り続けます!(取材:松本翔子/2017年5月取材・2022年8月最終更新)
インフォメーション
大福 新川店
※「大福 新川店」は2022年6月に閉店しました。掲載した情報は2017年5月取材時点のものです。
場所:愛知県碧南市新川町4-45
電話:0566-41-0814
営業時間:11:00~14:00/17:00~19:00
定休日:水曜/第2・4土曜(駐車場あり)