さまざまな防災豆知識を紹介
私たちの住む愛知県では「来る来る」と言われ続けている巨大地震。ちゃんと自分の身に起こることとして考えよう、そして最初の一歩を踏み出そう。そんな思いから、"碧南市のミスター防災(勝手に命名)" 神谷賢司さんに、防災のあれこれをお聞きしました。
前編では、まずは手がつけやすい食料備蓄について教えてもらいました。そして、具体的な方法として、ポリ袋調理を教わったところで神谷さんからもうひとつ防災豆知識が。「ポリ袋調理と同時に、湯たんぽを作れますよ!」
電気・ガスが止まったときの体温調整
ペットボトル湯たんぽは、ポリ袋調理中につくることができます。
湯たんぽ!そういえば、3.11の時も、阪神・淡路大震災の際も、雪が。画面越しながら、被災地は寒さが辛そうだと身を縮めたものでした。さらにはこの地域で戦時下の1945年に発生した三河地震も、寒さ厳しい1月中旬。しかも被災後、結構な積雪が記録されています。そんな時に湯たんぽは絶対ありがたい。その作り方は?
「ペットボトルに水を入れて温める。ただそれだけです」。これなら、前編で紹介したポリ袋調理と同時にできますね。温めたあとは、ペットボトルの周りに巻くタオルの厚さで温度調整します。
「なんだ、そんなこと!」なのですが。
「単純なことですが、知らなければ非常時になかなか思いつかないものです。逆に、知ってさえいれば、貴重な熱源でついでに湯たんぽが作れる。寒さをしのぐのがずいぶん楽になりますよ」。
備蓄のペットボトル飲料を湯たんぽにして、冷めたら飲む。そんなこともできます。中身が炭酸飲料だとフタをしたままの湯煎はNGですが、その一方で炭酸のペットボトルは丈夫なものが多く活用しやすいとか。
被災時にこそ大切な「住」環境
最近ではフローリングに敷く畳も。こちらも活用できます。
「湯たんぽの存在は大きいですよ。夜、眠れるのと眠れないのでは大違い。」と神谷さん。「自宅が全半壊してテントや倉庫での生活を余儀なくされたとき、持ち出せると避難生活が楽になるのが、畳です」。確かに、地面やフロアで直接寝起きするのと、畳を敷いて過ごすのでは快適さはまったくちがいますよね。
「あと、備えとしてよく言われますが、ブルーシートは必携です。雨漏りを防いだり、割れた窓をふさいだり」。テントのような使い方や風除けにするときを想定すると、一緒にロープも備えておきたいところです。
切実なトイレ問題
「トイレットペーパーは箱買いですね。45リットルのポリ袋も。トイレ問題は深刻です」。東日本大震災の際は、被災地だけでなく全国的にトイレットペーパー不足が起きました。45リットルのポリ袋は、水の運搬や雨具としても利用できますが、断水時、家庭の便器にかけて新聞紙などとともに簡易トイレになります。
「あと、大人用の紙オムツは、いざというとき焦らずにすみますよ。配給の列に長時間並ぶ時など、外出先ではトイレを借りられませんからね。オムツとして使わなくても、簡易トイレの吸着剤にもなりますし」。
防災力は、応用力
新潟県中越地震の際の通行止め状況の掲示。普段「あたりまえ」にあるものが、届かなくなります。<出典:(財)消防防災科学センター 災害写真データベース>
お米に、ペットボトルに、ブルーシートに、トイレットペーパー。こうして聞いてみると、普段身の回りにあるものばかりなのですが、"備える"という意識が大事なのですね。「使い方を知らないと、モノはあっても意味がないんです。災害時に力を発揮するのは、応用力ですよ。」と神谷さん。
なるほど、防災力は応用力ですか。そこにあるのに知らない使い方、たくさんありそうです。「そういえば、電気温水器の"お助けコック"はご存知ですか?」
確認は、すぐにできる防災です
筆者の電気温水器。"お助けコック"と対面するまでには、プラスドライバーが必要でした。
近年すっかり普及した電気温水器も、災害時に意外なカタチで役に立ちます。「災害時に断水しても、タンクの中にお湯(水)が残っていれば、非常用のコックから取り出せるタイプが多いのですよ。タンクのサイズによりますが、200~500リットルぐらいありますから、生活用水として助かります。」と神谷さん。飲むことはできないようですが、それこそ、ポリ袋調理の湯煎用にも湯たんぽにも、いざという時のトイレにも使えます。
防災は、必ずしも特別な備えが必要なわけではなくて、知っておくこと、確認しておくことが大事なんですね。この地域は、大地震がいつ来てもおかしくないといわれています。まずは、身の回りの再確認から始めてみませんか。
前編では、意外に知らない「食料備蓄」の方法について紹介しています。こちらも、ぜひご覧ください。