決して派手な見た目ではないけれど、何だか忘れられず何度も食べたくなるラーメンが食べられるお店。それが知立市にある「知立らーめん」です。
店主の内藤秀詩さんは現在73歳、この道約40年。「最後のスープ一口までおいしく食べられるラーメン」を目指し、試行錯誤を重ねたといいます。営業はお昼のみ、メニューはラーメンと餃子の2本立て。それでもお客さんは絶えず、この味を求めるリピーターも多いそう。地元民から愛されるラーメン店のおいしさの秘密や、愛される秘訣に迫ります。
知立市役所そば、大きな看板が目印
お店は知立市役所のすぐそばにあります。長屋造りの建物の一角にあり、共同駐車場も広々としているので、立ち寄りやすいのもうれしいポイントです。上部に掲げられた大きな看板が目印。
ランチタイムになるとお昼休みのサラリーマンなど、多くの人がやってきます。開店当初は知立駅前にあったそうですが、駅前再開発の際にこちらへ移転。ちょっと色褪せた紫色ののれんがいい味を出しています。
店主の内藤秀詩さんはこの道40年のベテラン
1983年に豊明市で中華料理店を開店して以来、料理の道を進んできた内藤さん。商社に勤めていたものの、「この先、外食産業が伸びていく」と飲食業界へ足を踏み入れました。
その見込み通り、刈谷市へ支店を出したり、名古屋市に餃子専門店を開いたりと順調でしたが、リーマンショックやコロナ禍などいくつもの壁にぶち当たって閉店と開店を繰り返し、現在の「知立らーめん」は5店舗目。「飲食店は大変だけど、お客さんとストレートにやり取りできるのがいい。人が好きじゃないとできないね」と笑います。
知立ラーメンはしょうゆ味の縮れ細麺
さて、肝心のラーメンはというと、しょうゆ味のスープにやや縮れた細麺、分厚いチャーシューがどんと乗っています。写真は「知立らーめん2枚入り」(1,000円・税込)。2枚というのはチャーシューの数のことで、他に1枚入りやトッピングで追加もできます。
鶏ガラと豚骨、魚介類がベースになっているスープは透き通っていてクセがなく、素朴ながらも最後まで飽きずに食べることができる味わい。国産小麦を使った麺との相性も抜群です。
40年の旨み!テイクアウトOKのチャーシュー
自慢のチャーシュー(煮豚)は、豚バラの塊肉をスープで煮込んだ後、中華料理店の頃から継ぎ足して使っているタレに漬け込んでいます。つまり40年の旨みが蓄積された唯一無二の味で、豚肉の旨みだけが濃縮されているのです。
真空パックにしてテイクアウト(500円・税込/100g)もできるようになっていますが、スープの味が変わってしまうため、一度に作れる数は限られています。「出会えたらラッキーですよ」と内藤さんは言います。
いい素材を使って丁寧に作る餃子も人気
知立らーめんにはもう一つ名物が。それは餃子(450円・税込)です。「これまで500万個は作ってきたかなぁ」という内藤さん。焼きたてを食べてみると、キャベツの甘みと豚肉の旨みがマッチしている味で、焼き目はカリッと、皮はもちもちという、餃子に求める全ての要素が入っていてまさにパーフェクト!
なぜこんなにおいしくなるんですか?という質問には「いい素材を使ってるからだよ」。おいしく食べてほしいという一心から、素材選びにも妥協はありません。
内藤さんの人生が詰まった本を出版
2021年には自書も出版。「飲食店なんてやるもんじゃない、わけでもないらーめん屋店主という人生の選択」というタイトルの通り、人生の半分以上を飲食業に費やした、内藤さんの人生と経営哲学が詰め込まれています。世の中には数多くの飲食店であふれていますが、「おいしいものを、おいしい状態で提供し、おいしく食べてもらう」というシンプルなことを遂行していくことがいかに難しいか、飲食業界について考えさせられます。
「飲食店なんてやるもんじゃない、わけでもないらーめん屋店主という人生の選択」
文芸社/1100円・税込/ISBN:978-4-286-22505-0
シンプルだからこそ難しいラーメン作り
2022年4月現在73歳の内藤さんは「まだまだお店を続けていきたい」と話します。「三河地方はしょうゆ作りが盛んだからしょうゆラーメンを選んだんですが、シンプルなだけに味を完成させるのは難しいんです。一口目にガツンとくるようインパクトを持たせると、半分食べた辺りから飽きてきて、最後は惰性で食べる羽目になっちゃう。最後までおいしく食べられる、というテーマで突き詰めて、今の味になりました」。シンプルながらも奥深い魅力の知立らーめんを、ぜひ一度ご賞味あれ。(取材:河合春奈/2022年4月取材)