愛知県刈谷市にある「オフィス万年青(おもと)」は、不動産業を営む会社です。が、世間一般的なイメージの"不動産会社"とは、ちょっと趣が異なります。
代表の尾本佳久さんは土木関連の現場監督やハウスメーカーの営業、設計など、さまざまな仕事を経験した後に未経験業種となる不動産業として独立したという異色の経歴の持ち主。しかもとても穏やかな口調で嘘偽りのない話をしてくれて、個人的主観で思っていた「住宅関連の営業=イケイケ営業マン」という姿とは少し違う気がしました。オフィス万年青をどんな想いで運営しているのか、じっくり伺います。
生涯現役でいるため独立を視野に
愛知県刈谷市の、住宅と田んぼに囲まれた場所にあるオフィス万年青。自宅隣の事務所の壁には、名前の「尾本」にかけて縁起の良い植物・万年青の絵が描かれています。
開業したのは2018年。豊田高専卒業後、土木関連の現場監督を経験した後、ハウスメーカーの現場監督や営業、マンション販売の営業、リフォーム会社の営業、設計などを経験。独立を考えたのは37歳の時。4人目の子どもが誕生し、生涯現役でいるためには...と自営業を選択することに。
いつでも落ち着いて話せるのは現場で経験から
会社員生活では遠方で勤務することもありましたが、「地元・刈谷に腰を据えたい」と感じたことも独立を考えるきっかけに。
「いろいろやった中で、やっぱり現場監督が一番大変でした。安全第一の作業の中で、自分の父よりも年上の色々なタイプの職人さんに、気持ちよく厳しく仕事を全うしてもらうにはどう接するべきなのか、本当に当時は一所懸命でした。そのような経験を積んだことで、今では皆さんそれぞれに合った話し方や接し方を自然に行えるようになったと思います」と尾本さん。
不動産売買のほか 間取りや耐震診断の相談も
不動産業をメインとしながらも、建築士の資格を活かして一般住宅の新築やリフォームの相談にものっているそう。
「お客様からすれば、中古住宅の購入となれば耐震強度も気になるだろうし、リフォームが必要になることもあると思います。そういうことをひっくるめて住まいに関して頼まれたことは基本的にすべて笑顔で引き受けます」。フットワークが軽く、「とりあえず尾本さんに相談してみよう」と思われるのも頷けます。
お客様の立場で話せるのは未経験だからこそ
不動産取引に必要な資格「宅地建物取引士」の資格は会社員時代に取得していたものの、不動産業の経験がないまま独立した尾本さん。
自身の強みを聞いてみると「常にお客様目線でいられることでしょうか。不動産業界では常識と考えられていることも私自身が知らないので(笑)。お客様の側の感覚でいられるので、複雑に思われる不動産関連の情報を、知識がない方にわかりやすく伝えることができるのかもしれません」。
正直な姿勢がお客様の信頼につながる
お客様目線で話をしているということは、いいことも悪いことも全て伝えているということでもあります。その正直な姿勢は、お客様からの信頼を得ることにつながっています。
「不動産のことで少し話をしたことがある方から、その1年後に問い合わせがあって。『尾本さんの話が一番信頼できたから』と言われて、うれしかったですね」というエピソードも。
人とのご縁を大切に、住みやすい町を目指して
オフィス万年青を運営する上で大事にしていることが、「人とのご縁」。そのため、骨の折れるような仕事であっても断らず、笑顔で引き受けているそうです。
よく自転車にのって刈谷エリアを回っているのも、町の人々と少し立ち止まって会話がしやすいからだそう。話の中から不動産取引につながることも。「仕事につながるといいな、という下心もあるにはあるんですけど(笑)、人と人とのつながりの輪が広がって、住みやすい町にしたい」と尾本さん。
挨拶し合える「心豊かな住みやすい町」
尾本さんが考える住みやすい町とは「笑顔があふれる町」のこと。具体的には、町で人とすれ違った時、見知らぬ方であっても挨拶し合い、地域のコミュニケーションが活発なことだといいます。
「物や施設じゃなくて、心の豊かさが感じられる町。そういう町だったら、子どもも安心して暮らせますよね」と、家族を大切にしている尾本さんらしい意見も。100年後も住みやすい町であるように、人とのつながりを大切にしています。
刈谷に根差した不動産会社に
今後の展望は?「75歳まで現役!独立する時に『とにかく笑顔 ひたすら誠実 とことん前向き』というモットーを掲げましたが、これをずっと維持していきたいですね。何か大きいことをしたいということは考えていません。小さくていいから、地域密着の不動産会社にしていきたいです」。
生まれ育った刈谷をより良くしていくべく、これからも地道に、誠実な仕事を続けていくことを目標としています。(取材:河合春奈/2022年1月取材)