愛知県刈谷市を本拠地とするプロバスケットボールチーム「シーホース三河」。日本のプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」では2017年にB.LEAGUE B1・西地区優勝を果たすなど、全国の上位と争う西地区の強豪チームです。
そんなシーホース三河で2001年から2020年までトッププレーヤーとして活躍していたのが桜木ジェイアールさん。NBAでもプレー経験のある彼の輝かしい功績と、19年間シーホース三河一筋でバスケットボールに挑み続けた彼の軌跡、そしてシーホース三河への思いを語った引退セレモニーを取材しました。
シーホース三河の大黒柱として活躍
「ミスターシーホース!ジェイアール、桜木~!」。シーホース三河ホームゲーム会場・ウィングアリーナ刈谷のホームコートMCの小林拓一郎さんの掛け声とともに会場に歓喜が響きわたる中、登場しました。
2001年に現在のシーホース三河の前身となる「アイシン精機シーホース」に所属。2017年のB.LEAGUE B1・西地区、2018年のB.LEAGUE B1・中地区優勝に貢献!バスケットボール日本代表にも選ばれ、シーホース三河だけでなく、日本のバスケットボール界に大きな影響を与え続けました。
全米大学バスケットボール選手権で優勝も!
引退セレモニー冒頭では、学生時代からの桜木さんの活躍を動画で振り返りました。
1994年に大学バスケの強豪校・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に入学。そして、1995年に全米大学バスケットボール選手権(NCAA)で優勝。このNCAAでのプレー実績から、1998年に、NBAドラフト2巡目でバンクーバー・グリズリーズに指名され入団。その後、NBAを離れ、2001年に現在のシーホースの前身となる「アイシン精機シーホース」に所属しました。
パスの精度を上げてゴールに導く
引退セレモニーで、ホームコートMCからUCLAやNBA時代のことを問われると。
「とても得難い経験をしたと感じます。バスケットボールの技術が素晴らしい選手が集まるハイレベルな世界でした。そんな中でも、周囲の選手と切磋琢磨しながら積み上げてきた努力の一つひとつが、今の自分のプレースタイルのベースになっています。UCLAやNBA時代に培ったことは一生、忘れられません」と入団前に思いを馳せます。
桜木ジェイアールさんの第一印象は?
会場には、シーホース三河のヘッドコーチ(HC)・鈴木貴美一さんと、スペシャルゲストとして、過去に桜木さんと共にアイシンシーホースでプレーをした外山英明さん、佐藤信長さん、佐古賢一さんの3名が引退を称えるとともに、桜木さんの印象について話します。
鈴木HC:「アイシンで活躍しはじめたとき、オフェンスのしなやかさやパスのセンスに脱帽しました」。
外山さん:「ベビーフック(片手でのシュート)が本当に上手で。何点稼いでくれたことか!」。
佐藤さん:「チームメイトになったときに、攻守のフォーメーションを1回ですぐに覚えていたのも驚きました。すごく頭の良いプレーヤーだと感じて、"困ったときのJ"です(笑)」。
佐古さん:「困ったときには、ジェイアールにボールを集めればやってくれる。頼りになる選手でした」。
鈴木HC:「自分ひとりでゴールを集めてプレーしていれば、得点王になれたと思う。でも、彼のパススキルを活かすために"チームプレーを大事にしよう"。そうアドバイスしたのは記憶に残っています」
「日本人を尊敬する気持ちが人一倍強かった」とも話した鈴木HC。桜木さんの存在の大きさに改めて気づかされた様子でした。
ポストプレーが印象的だった現役時代
ゴール下のインサイドから攻める多彩なプレーは、桜木さんの魅力のひとつ。卓越した状況判断から繰り出されるアシストは、鈴木HCも大絶賛です。
コート上ではゴール近くで味方にパスを回し攻撃の起点をつくる「ポストプレー」を軸に、パワフルな攻撃をしていた桜木さん。彼の熱きプレーに心を揺さぶられたファンも多かったのではないでしょうか。
現役選手から「サンクスメッセージ」が続々と
セレモニーでは、そんな桜木さんとともにプレーした選手から、動画でサプライズの「サンクスメッセージ」が!
比江島慎選手 現・宇都宮ブレックス
「ジェイアールは面倒見がよくて父親のような存在でした。僕のバスケットボール人生の中で、ジェイアールと過ごした時間はかけがえのない財産です。第二の人生を楽しんでがんばってください。あと、長生きしてください(笑)」。
橋本竜馬選手 現・レバンガ北海道
「僕は7年間、共にプレーさせていただいて、プロとしての厳しさを教えていただきましたし、1部リーグ優勝も経験できました。たくさんの時間を共有できたことをとても誇りに思います。ありがとうございます。長い選手生活、お疲れ様でした」。
多くの選手やファンから慕われ愛される存在
さまざまな選手が動画の中で感謝を伝える中で多かったのが"父親のような存在"だったという言葉。たとえチームを離れ、敵同士になったとしても互いにリスペクトし、励まし合う。そんな広い心を持つ優しさがあったからこそ、日本バスケットボール界の生きる伝説として、たくさんの選手やファンから慕われるのでしょう。
「チームメイトがどうしたら活躍できるか?常に考えていました。私がいなくても、チーム一人ひとりが成長していけるように、チームを引っ張るという強い信念を持てるようにと意識していたからです」と真摯に語りました。
妻も息子も、家族は私のすべて
引退セレモニーでは、奥様のクリスティーナさんと息子のマラカイくんが花束を持ち労いました。
クリスティーナさん&マラカイくん
長い選手生活を過ごすことができたのは、家族のように温かく接してくださったシーホース三河の選手やスタッフのみなさんのおかげです。改めて感謝申し上げます。これからも、決して忘れません。
桜木さん
家族は、私のすべてだと思っています。練習でヘトヘトになってしまったときも、妻や息子の存在が心の支えになりました。家族の献身的なサポートがあったからこそ、コート上でのベストなパフォーマンスにつながりました。
桜木ジェイアールさんから最後にメッセージ
私たちが築き上げてきたのは勝利という"伝統"そのものです。そして、それは素晴らしいプレーヤーたちがいるからこそ成り立ちます。長い間、今のチームをつくり上げるために、本当にたくさんの方が個々に努力をしてきました。そして今日、みなさんが私を称えてくださるのは、私がその努力を19年間続けることができたからこそだと感じています。
私たちが今日、ここで積み上げてきたものをみなさんのお子さんの時代に引き継ぎ、楽しんでいただきたいです。最後に、何年も支えてくださったアイシンの方々、そして多くの選手の方々に感謝を申し上げます。
メッセージフラッグに思いを込めて
引退セレモニーの別会場には桜木ジェイアールさんに向けて想いを届ける「メッセージフラッグ」の用意も!ファンの青援(声援)に応え続けてきた桜木さんに、ファンから愛にあふれた言葉の数々がフラッグ一面に紡ぎ出されます。
「19年間お疲れ様でした。次のステージでもがんばってください」「バスケの楽しさを教えてくれてありがとう」「感動をたくさん、ありがとうございました」などなど、数えきれないほどたくさんのメッセージが書き込まれていました。
笑顔で「Thank you! J」
最後は、ファン一人ひとりに向けてロビーでお見送りをしていました!ファンの方の中には手を振ったり、「YOU ARE MY HERO」と書かれたメッセージを本人に見せたり、思い思いに祝福します。
桜木さんからファンのみなさまへ
最後の試合が無観客だったときは空しい気持ちがしていました。私はファンのみなさんのためにプレーをしてきたからです。今日のセレモニーのように、ファンの方に直接お会いできたことは、本当にうれしく思います。
選手の頃と同じくチームを優勝に導きたい
2020年6月に現役を退いたあと、バスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)20-21シーズン「アイシン・エィ・ダブリュ ウィングス」のテクニカルアドバイザーに就任しました。新たなバスケットボールチームの指導者になった今も、選手だったときと同様に、指導者としてチームを優勝に導くことが目標と桜木さんは話します。
「シーホース三河とは、同じもの(バスケットボール)を愛する人たちが集まり、落ち着ける場所」と桜木さん。バスケットボールを心から楽しんでプレーするシーホース三河の選手への深い愛情を、最後まで感じた引退セレモニーでした。Thank you! J! (取材:壁谷雪乃)
シーホース三河
愛知県刈谷市を拠点に活動するプロバスケットボールクラブ「シーホース三河」。1947年に創部され、「龍のように強く、勇ましく成長してほしい」との願いを込めて「シーホース」(タツノオトシゴ)と名付けられました。試合会場では臨場感あふれる白熱したプレーで観客を魅了。選手と観客が一体となって共に頂点を目指し、バスケットボールを通して西三河地域を熱く盛り上げます!
ホーム会場:ウィングアリーナ刈谷(愛知県刈谷市築地町荒田1-1)
※試合日程については、公式ホームページでご確認ください。