伝統を継承することはチャレンジを続けること
「手の平サイズで可愛いでしょ」と、愛知県高浜市のふるさと納税の返礼品でもあるカラフルなだるまを見せてくれたのは、鬼師の加藤宜高さん。鬼瓦をはじめとした屋根の装飾全般を手がける職人は、尊敬の念を込めて「鬼師」または「鬼板師」と呼ばれる。そのちょっといかつい呼び名を打ち消すような、にっこりとした笑顔とやわらかな雰囲気が印象的な加藤さん。
1日に何十個もの家紋の製作をしながら、一人では作業できない巨大な瓦や寺社の屋根などを父親と協力して造ることで腕を磨いた。
瓦独自のいぶし銀にこだわる
今では京都の知恩院の鬼瓦を復元するなど、仕上がりをイメージして再現する技術が高く評価されている。需要が減少している瓦業界で瓦の新たな魅力を打ち出そうと、家の中に置けるインテリアや雑貨などに着目。
瓦独特のいぶし銀は大切にしながらも、釉薬を使ったカラフルな商品の製作も始めたのだとか。現在は、2020年の夏の展覧会に向けた作品を製作するほか、アクセサリーなどの新商品の開発も行っている。日々、技術を磨きながら鬼瓦の可能性を探る、加藤さんの挑戦はこれからも続く。
加藤宜高さん
愛知県高浜市にある株式会社丸市の代表を務める、三代目。大学卒業後、窯業の現状を肌で感じるために窯業機械メーカーに勤務し、家業を継ぐために株式会社丸市へ入社。鬼師として三州鬼瓦工芸品を継承しながら、アート作品の製作や展覧会への出品なども精力的に行う。
ひとつひとつを手作りする職人の技を活かした商品の開発をするなど、世の中の流れにアンテナを張って業界の未来を考えているアイデアマンでもある。
株式会社 丸市
昭和元年創業の加藤製鬼瓦工場を起源に、丸市製鬼瓦工場、丸市鬼瓦工場と変遷を遂げ、昭和49年に株式会社として設立。五千種類以上の大小さまざまな鬼瓦用の家紋型を持ち、家紋や特注品の製作を得意としながら、文化的価値の高い寺社の屋根の修復なども手がけている。
場所:愛知県高浜市屋敷町1-2-2
電話:0566-53-0471
(キャッチネットワークのライフコネクトチャンネルマガジン・ケーブルテレビの向こうがわ。2020年1月~3月号より)