「鉄の仕事屋」が生んだ逸品
「私の薪ストーブは、『SLみたい』と言われることがあるんです。祖父におぶられて安城駅まで見に行った思い出のせいかもしれませんね」。そう笑顔で語るのは、愛知県安城市にある『鉄の仕事屋』を営む杉浦章介さん。
祖父の代は農鍛冶を、父は工場の仕事を請け負ったという鍛冶屋の3代目だ。そんな杉浦さんに転機をもたらしたのが、知人からの「薪ストーブを作ってもらえないか?」という依頼だった。
10年の試行錯誤を重ねた薪ストーブ
「1990年頃に製作を始め、92年に完成。当初は見よう見まねでした」と杉浦さん。一気に薪ストーブの奥深さに魅せられるも、10年間は薪ストーブの販売は行わなかった。
「ストーブは火を使うものだから、検証を重ねて強度や安全性を高めたかったんです」とワンタッチで開く点検口を付けるなど試行錯誤。完成させたのが「森のストーブ」である。
職人の技術の結集
厚さ9ミリの鋼板を用い、接合部にリベットを打ち込んだボディは堅牢でハードなデザイン。「せっかく薪を燃やすのだから、料理にも使ってほしい」と、オーブンも備える。
「ガスや電気がない時代、ヨーロッパで使われていた薪ストーブ。日本でも震災時に役立ったと聞いています」。さらにわずかな燃料で温め、料理もできるロケットストーブも製作。その進化形にも打ち込んでいきたいと意欲を語ってくれた。
現在は、4代目・宏太さんも共に家業を。宏太さんがデザインして父・章介さんが製造することも多々あるという。
杉浦章介
1955年安城市生まれ。京都精華短期大学(現・京都精華大学)立体造形コースを卒業。
『鉄の仕事屋』3代目に。受け継いだ技術を守り、オリジナル製品も手がける。
(キャッチネットワークのライフコネクトチャンネルマガジン・ケーブルテレビの向こうがわ。2017冬号より)