2024年8月、Karicoco(刈谷駅北地区地域交流施設)で、障がいのある人が描いた絵の展示が行われました。展示会の名前は、「かりやアール・ブリュット展2024」。近年は、障がいのある人の作品を企業や団体などが様々な場面でいかす取り組みも盛んになっています。
今回は、アール・ブリュットの魅力と可能性を探ります。
かりやアール・ブリュット展
「かりやアール・ブリュット展」を開催したのは、刈谷市のNPO法人くるくるです。くるくるは、子どもから大人まで障がいのある人の支援を行っています。展示会の名前である「アール・ブリュット」とは、内側からわきあがる衝動のままに表現した芸術を示します。
あいちアール・ブリュットは、愛知県内の障がいのある人の芸術・文化活動を通じて、障がいのある人の社会参加と理解、障がいの有無をこえた交流が広がることを目指す活動で、愛知県が行っています。
オリジナルキャラクターを描く高校三年生
自宅で画用紙に向かい、夢中になって絵を描いているのは、NPO法人くるくるを利用している安城市在住の高校3年生、森駿介さんです。
自閉スペクトラム症の森さんは、豊田市内の特別支援学校に通っています。8歳から絵を描き始め、9歳の頃に昆虫図鑑で見た蚊に興味を持ち、それからは蚊やオリジナルキャラクターの絵を描いています。例えば、森さんが考えたキャラクター「ダンボルガー」は、以前通っていた造形教室でお化け屋敷を催した際に、森さん自身が扮したダンボールのお化けから生まれました。
およそ1,000のキャラクターを生み出した
森さんがこれまで生み出してきたキャラクターの数はおよそ1,000。そのキャラクターをたくさん組み合わせて1枚の絵にしています。
「こういうのを描いてみたいなとか、こういうのを描いてみてもいいかもしれないというアイディアがすごく浮かぶので、絵を描くのが大好きです」と、森さんは話してくれました。
絵で自己肯定ができるようになった
母親の森喜惠さんは、絵を描くようになってから駿介さんの様子に変化があったと言います。
「以前は人が苦手でした。でも展示会などをやるようになって、色んな方が声をかけてくださるので、うまく話せるようになってきました。人とコミュニケーションを取るのが苦手なので生きづらいところはあるのですが、絵をきっかけに人と関わるようになって『自分には絵がある』と思えたことで、それまで低かった自己肯定感が高まったことが、本当によかったと思っています」
あいちアール・ブリュット展
森さんは2022年に初めて、あいちアール・ブリュット展に応募しました。2014年にはじまったあいちアール・ブリュット展は、県内の障がいのある人から寄せられた作品を展示しています。また、その中から審査により選ばれた30点を紹介する「優秀作品特別展」も開催しています。森さんが出展した「ぼくのオリジナルキャラクター大集合!」が2022年度の優秀賞を受賞したのです。その時の気持ちを、「『本当に選ばれたの?』って、びっくりしたけどうれしかったです」と話してくれました。
言葉に代わる表現としての絵
同じく2022年度のあいちアール・ブリュット展で入賞したのが、NPO法人くるくるの利用者で安城市内の小学校の特別支援学級に通う、小学4年生 内田悠介さんです。内田さんは5歳の頃に映画「スターウォーズ」と歴史の本に興味を持ち、絵を描くようになったそうです。現在はみよし市の絵画教室にも月に1度通っています。
内田さんの母 夕子さんは、絵を描くようになってからの悠介さんについて、
「絵を描くことで気持ちを発散させたり、楽しさを表現したりしていて、特に小さい頃は言葉の代わりになる表現が絵だったと思います」と話してくれました。
550点をまとめた作品で優秀賞を受賞
「絵を描くことが好き」と言う内田さん。内田さんは、2020年から毎年、あいちアールブリュット展に参加しています。2022年度には、内田さんが思いのままに描いた約550点をまとめた作品「スマホくんにタッチ!」が優秀賞に選ばれました。
NPO法人くるくるのアート活動
森さんと内田さんが利用しているNPO法人くるくるは、誰もが自分らしく暮らせる社会を目指し、障がいのある人の生活支援や就労支援を行っています。施設での活動の一つとしてアート活動を取り入れ、利用者が絵画などに楽しく取り組んでいます。
アートを通して人と関わる力が育つ
NPO法人くるくる みらくるの大寺和子さんにアート活動を取り入れるメリットを聞きました。
「自分の気持ちを絵や文字にして自己表現できるようになると、人との関わり方が変わってきます。自分の希望や要求を人に伝えられるとそれに対して返事が返ってくる、という体験を通して、そういったやり取りをしてもいいんだということに気づいていくのだと思います」
かりやアール・ブリュット展は、多くの人にアール・ブリュットについて知ってもらいたいと開催しました。
アートをきっかけに知ってほしい
展示会を行った目的を、NPO法人くるくる 中井啓介さんに聞きました。
「世の中にはいろんな人がいて、その中に障がいを持つ方もいますが、素晴らしい作品を見て、もっと知ってもらう機会になってほしくて展示会を開催しました」
かりやアール・ブリュット展の会場で、内田さんと森さんにインタビューしました。
内田さんは作品について、YouTubeで知った世界一背の高い人に興味を持って描いたと教えてくれ、森さんはたくさんの人が見てくれてうれしいと話してくれました。
様々なシーンで活用されるアール・ブリュット
森さんの作品は、エコバッグとトートバッグのデザインやウォールアートとしても採用されています。アール・ブリュットは、様々なシーンで活用されることも増え、その可能性も広がっています。作品がいろいろなところで活用されていることに対して森さんはどう感じているのか聞いてみました。
「とてもうれしいです。自分の考えたキャラクターがすごく愛されているんだなと思います」
アートで多様性の意義を伝えていく
アール・ブリュットには、「専門の美術教育を受けていない人の芸術」という意味もあります。枠にとらわれない自由な色づかいやモチーフは、作者の内側から湧き上がる感情の表現でもあります。そうした作品は、見る者の心に驚きや感動、癒しを与えてくれ、また多様性の意義を伝えてくれるのです。
Karicoco(刈谷駅北地区地域交流施設)
住所:刈谷市桜町1-22 アドバンススクエア刈谷桜町2階
電話:0566-28-3451
利用時間:7時~22時
休館日:12月31日、1月1日、1月2日
※かりやアール・ブリュット展2024は終了しています
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