私たちの身近にある、もったいないと思いながら捨てているもの。
現在、愛知県刈谷市では、身近にある「もったいない」を活用したいと始まった、コーヒーかすの再利用活動が行われています。これまで捨てられていたコーヒーかすからたい肥をつくり、そのたい肥を使って野菜などを作ります。
活動が始まったきっかけは、1人の女性の「もったいない」という想いでした。
1人の想いから地域を巻き込んで進むSDGsの取り組みを取材しました。
「もったいない」から始まったSDGsの活動
さまざまな作物が育てられている刈谷市下重原町の畑。畑に撒かれている肥料はコーヒーを抽出した後に残る“コーヒーかす”から作られたものです。コーヒーかすを再利用する活動を始めたのが、大浦智香さんです。
「コーヒーが好きでよく飲んでいるのですが、コーヒーかすが残ってしまうのが気になっていました。これをどうにか捨てずに再利用できる方法はないかと考えたんです」
そんな大浦さんは、コーヒーかすの活用方法を調べる中で「コーヒーかすをたい肥に作り変える」という方法を知ったといいます。
捨てられるコーヒーかすをたい肥に
大浦さんが作るたい肥の材料は、捨てられるコーヒーかすをはじめ、ビールの製造過程で出る麦芽など、そのほとんどがこれまで捨てられていたものです。
「実際に京都でコーヒーかすからたい肥を作っている方がいて、その方のレシピを参考に、配合率を変えるなど試行錯誤しています」
コーヒーかすだけでは肥料にならないため、コーヒーかすに麦芽や米ぬかなどの材料を段ボール箱に入れてよく混ぜ合わせます。そうして待つことおよそ1か月、材料が発酵することでコーヒーかすたい肥が完成します。
市内の事業者らにも広がる活動
はじめは自分の家で出たコーヒーかすを利用して、たい肥を作っていた大浦さん。
活動をする中で飲食店がどのようにコーヒーかすを扱っているのか気になり調べたところ、ほとんどのコーヒーかすが廃棄されていることを知ったといいます。
そこで、近隣のお店にコーヒーかすを提供してもらえないか相談をしたところ、現在、刈谷市内の2つの店舗が大浦さんの活動に協力しています。
「当店では廃棄してしまうものなので、再利用してくれたらいいなと思っています」
大浦さんに協力する店舗のひとつ、ワクラバコーヒーの河野大輔さんは話します。
6月初旬、大浦さんが訪れたのは、刈谷市今川町でビールの製造を行っているKARIYA 75 BREWING。ビールを作る過程で出た麦芽のかすをもらいにきたといいます。
大浦さんの活動に力を貸すKARIYA 75 BREWINGの宮川太一さんは「麦芽のかすの活用は、うちだけでなく色んなブルワリーで課題となっています。いい活用方法があればと思っていたところに声をかけてもらったので、協力しようと思いました」と話します。
コーヒーかすだけでなく、たい肥の材料となる麦芽のかすなども市内の事業者の協力があり集まっています。
活動を通して街の人たちのコミュニティーを
その他にも多くの人が、大浦さんの想いをきっかけに集まります。
活動に使っている畑は就労継続支援B型事業所「いこいプレイス」の畑です。そこで現在、いこいプレイスの利用者らと一緒に作業をしています。
「もったいない」という想いから生まれた、コーヒーかすの再利用活動が、多くの人を巻き込んだ活動になっています。
「街の人が何かを感じたり、学んだりするきっかけになればと思っています。この畑が、街のコミュニティーを育むような場所になっていくといいですね」
大浦さんはこれからの活動に期待を膨らませます。
(取材・撮影:太田寛人/文:石川玲子 2023年6月取材)
コーヒーかすの再利用活動
コーヒーかすの再利用活動の様子はこちらから確認できます
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