3月3日はひな祭り。「私も昔は毎年、ひな人形を飾っていたなぁ~」としみじみしながら近所のはなし取材班が訪れたのは、人形のまちとしておなじみの愛知県高浜市吉浜地区。すると、町の中で衝撃的なひな人形を発見してしまいました!
無数のひな人形が、アクロバティックなポーズをしていたり、手に応援旗(時にビール)を持ってスポーツ選手らを応援したり…どうやらパリ五輪の様子をひな人形で表現しているようです。この取り組みは「福よせ雛」と呼ばれているもの。一体どんな取り組みなのか、全容を知るべく調査してみました!
人形のまち・高浜市吉浜に到着!まずは人形小路一番館へ
名鉄吉浜駅を出て右手に向かって歩くと見えてくる「人形小路一番館」。ここでは普段、愛知県の無形文化財でもある「吉浜細工人形」が展示されています。ちょっと覗いてみよう…と中に入ると、細工人形の周りに「応援しよう パリ五輪」と書かれた旗を持つひな人形たちも飾られているではありませんか!?ひな人形って赤い毛せんの上にちょこんと佇んでいて、雅な道具を手に持っているものではないんですか?
どうやらこれは「雛めぐり」というイベントの一環。さらに今日は「こども雛行列」もあるそう。これは吉浜を探索するしかありません!
陸上競技を見守るひな人形はなんと500体
道路に埋め込まれたレンガの矢印に沿って歩くと、左手に人形工房が見えてきます。どうやらここが、福よせ雛の会場の一つらしいのですが…中に入ってびっくり!ものすごい数のひな人形がズラリと並んでいます。中心には陸上トラックがあり、陸上競技にチャレンジする人形や、さまざまな国旗を持って選手を応援する人形たちが思い思いに過ごしています。
なんと500体以上が飾られているそうで、お内裏様はもちろん、三人官女や五人囃子、左大臣・右大臣、仕丁までいます。
新たな命を吹き込まれた「福よせ雛」とは?
こちらは、2024年夏に行われるパリ五輪をテーマに飾られている「福よせ雛」。
福よせ雛とは、持ち主の事情でやむを得ず手放されることになったひな人形に新しい役割を持たせ、みんなに福を呼ぶひな人形として生まれ変わらせるプロジェクトのこと。全国各地でプロジェクトが立ち上がっていますが、吉浜では今年で9回目の取り組みです。
今年の会場は2か所で、人形工房ではパリ五輪と地元のプロゴルファー・杉浦悠太選手が、もう一つの会場の「ふれあいプラザ前」では、吉浜に伝わる祭りを飾っています。ふれあいプラザは人形工房から徒歩1分程度。ここまできたらそちらも見にいきましょう。
着物を着て飛んだり走ったり!
こちらは陸上競技をやっている模様。着物を着てハードルを飛び越えるなんて、想像するだけで至難の業ですが、さすがは着物を着慣れたひな人形。ひょいっと飛び越えています(いるように見えます)。と、さらに強者は棒高跳びをやっているではありませんか!棒のたわみ具合といい、ひな人形の姿勢といい、本当に飛んでいるみたい…!
ほかにも走り幅跳びややり投げなど、さまざまな選手(に扮するひな人形)が奮闘しています!
まるで本物!?陸上競技観戦を楽しむ人形たち
観客席に目を向けると、国旗やメッセージフラッグを手に応援するひな人形たちのなかで、ビールを片手に観戦を楽しむ人形も…。なぜくちびるが「への字」になっているのでしょうか?応援してた選手が活躍しなかったのかな?
よーく観察すると、おすまし顔で応援する人形、はちまきを巻いて気合の入った応援をする人形、競技ではなく隣の人とのおしゃべりに熱中する人形など、いろんな人形たちがいて「ひな人形ってこんなに個性豊かだったんだ」と気づかされます。
人形のまちとして盛り上げたいとスタート
「福よせ雛 チーム吉浜」の一人・都築孝子さんにこだわったポイントを伺うと「ストーリー性のある飾り方ができるように工夫しています」とのこと。ひな人形の職位ではなく、着物の色で分けて観客席に並べたことで、国ごとの応援団のように団結している雰囲気を出しています。
さらに、パリ五輪の新しい取り組みとして行われる「セーヌ川での開会式」を表現するために、展示スペースを拡張して会場装飾を実施。いつもより広いスペースになったことでチームメンバーの負担は増えたものの、「観てくれる人に喜んでもらいたい」という一心で飾り付けをがんばったそうです。
ひな人形それぞれにストーリーを持たせる工夫が
過去にはさまざまなテーマで福よせ雛を展示しているチーム吉浜。毎年、スポーツやアニメ作品などの時事ネタ、地元にまつわる人や伝統行事などを取り上げることが多いそう。
チームメンバーで話し合い、すんなり決まることもあれば、二転三転することも…。テーマが決まったら会場内でどうやって展示するかを決め、展示スペースから手作りします。12人のチームメンバーが一体ずつ、衣裳やポーズ、表情を見ながら「どこに、どんなふうに飾ろうか…」と思案するそう。
「人形のまちとして、地域を盛り上げたい!」という気持ちで始まった取り組みですが、特に20代などの若者たちが人形に興味を持つきっかけになっているそうです。
思わずみんな笑顔に!ちびっこおひなさま登場
福よせ雛に見入っていると、なにやら人混みが。どうやら今日は、「こども雛行列」の日のようです。
こども雛行列とは、ちびっ子たちがひな人形の衣裳を身にまとい、吉浜の町を練り歩くイベント。姫&殿をはじめ、総勢15人の子どもたちが町中を厳かに進みます。
なんと応募総数は150人ほどあったそうで、倍率は10倍!屏風の前で記念撮影をした後、みんなで歩き始めました。私もついていってみます!
吉浜の町が雅な雰囲気に
町中を歩いていると、ちびっこたちを一目見ようと家から顔をのぞかせる住民も。最初は緊張した面持ちで歩いていた子どもたちも、だんだんとほぐれてきたようです。
JA吉浜支店を起点に、四番館、伝承工房、宝満寺、柳池院をまわり、おいでん横丁にてゴール!ちなみに応募資格は身長120cmまでの子ども。官女、五人囃子、右大臣・左大臣、仕丁までいますが、年齢はバラバラです。子どもの頃、左大臣が怖かった記憶がありますが…こちらの左大臣ちゃんは可愛いですね~。 (取材:河合春奈/2024年2月取材)
雛めぐり(福よせ雛)
2024年の雛めぐり
期間:2月17日~3月3日
場所:人形工房、ふれあいプラザ前、ほか人形小路一帯(愛知県高浜市屋敷町・名鉄吉浜駅前一帯)
福よせ雛うちが一番選手権
各地ご自慢の福よせ雛がエントリー!得票数を競い、一番人気の福よせ雛を決めます。
投票期間:2月1日~4月15日
福よせ雛うちが一番選手権投票サイト