micro_ichiranyou_dai2.jpg
あれこれ

アイスの棒って何て呼びますか?「ほせ」という謎に迫る!

「ほせ」とは、愛知県西三河地域に住む、ある一部の人たちがアイスの棒の意味で日常的に使っている言葉。

ですが、そもそも「ほせ」って他の町では使われていないの?方言?この奇妙な言葉の秘密を解き明かそうと調査してみました。

"ほせ"は人の名前にあらず

arekore15_01.jpg

「"ほせ"って分かりますか?」キャッチネットワーク・近所のはなし編集担当の角谷氏に尋ねられて思い浮かんだのは、何年か前までプロ野球のオリックス・バファローズにいたドミニカ出身のホセ・フェルナンデスでした。

「いやいや、人の名前じゃないです。碧南の人はアイスの棒のことを"ほせ"って呼ぶんですよ」。角谷氏は碧南市在住の30代で、同世代以上の碧南人にならたいてい通じるはずと力説。

筆者は知立市在住14年の40代ですが、これまで一度も聞いたことがありません。だいたいアイスの棒に別の呼び方があるなんて、普通は考えもしませんよね?

まずは地元の菓子問屋に突入

arekore15_02.jpg

「とりあえずここに聞いてはどうでしょう?」と角谷氏が挙げたのが、碧南市笹山町の菓子問屋「山田商店」。大手メーカーの袋菓子から数十円で買える駄菓子まで、さまざまな菓子を西三河地域の商店に卸している会社です。

応対してくれたのは山田和実さん。「碧南では"ほせ"って当たり前に使いますね。こうして改めて聞かれたから共通語でないことに気が付いたくらいです」。やはり、碧南市では日常的に使われている言葉であると再認識。

懐かしさいっぱいの駄菓子屋へ

arekore15_03.jpg

山田さんから、碧南市東山町に今や珍しい昔ながらの駄菓子屋さんがあると教えてもらい、後日、6歳の息子と訪ねました。

古い住宅地にあるその店「だんご屋」は、狭い店内に駄菓子がぎっしり並び、いかにも地元の子どもたちがたまり場にしそうな雰囲気。

さっそく棒アイスを購入して店主の杉浦貴美子さんに尋ねてみました。「うん、これは"ほせ"だね」。そのうち、店に近所の小学生三人組がやってきたので「"ほせ"ってわかる?」と聞いてみたところ、三人のうち一人が「わかる!」、残りの二人はキョトン。どうやら碧南では小学生の一部にも通用する言葉のようです。

だんごも駄菓子の串も"ほせ"だった!

arekore15_04.jpg

「だんご屋」は、創業は昭和46年で以前は屋号のとおりみたらしだんごが主力だったとか。かつて店の周囲には瓦工場が多く、腹持ちがよくて甘いだんごは工場の人たちに人気のおやつだったそうです。工場が少なくなるにつれだんごの需要も減り、今では駄菓子だけになりました。

すると、杉浦さんからさらなる情報が。「だんごの串も"ほせ"って言うよ」。えっ、アイスの棒だけじゃなくて?「というか、これくらいの串や棒はだいたいなんでも"ほせ"って言うの。串カステラや串イカとかの串もね」。

手作りだんご店は"ほせ"も手作り

arekore15_05.jpg

だんごといえば、碧南市民には天王町の旧大浜街道沿いにある「天王だんご屋」が有名です。

大正11年に創業した自家製だんごの老舗で、ともに1本80円のみたらしだんご・あんだんごが人気。店を営む樅山松一郎さん・房子さんご夫妻に聞くと「うん、このあたりじゃこれは"ほせ"だね。でもそう呼ぶ人はもう昔の人だけじゃないかな」。

"ほせ"に刺し込まれたおでんに舌鼓

arekore15_06.jpg

ほかに細長い棒で思い浮かぶのはおでんの串でしょうか。土用の丑の前に一色うなぎを取材した帰り道、西尾市一色市街地の一角におでんの赤ちょうちんを吊り下げた「ひらや」の前を通りかかったので立ち寄って聞いてみた。

すると、やはりおでんの串も"ほせ"と呼ばれていました。一杯やっていたお客さんも「そうそう」と頷き、ひとしきり方言話で盛り上がる店内。

アイスの棒のイメージしかなかった角谷氏は、漁師町らしい巻き貝のおでんにかぶりついて「これも"ほせ"なんだ...」と感慨深げ。

ところ変われば"ほせ"の意味も変わる?

arekore15_07.jpg

このようにあちこちで聞き取り調査を進めたところ、どうやらこの地域、刈谷・安城・高浜・知立・碧南・西尾では、おおよそ60歳以上の人なら"ほせ"が棒全般を意味する言葉だと理解していることがわかってきました。

そして、使われる地域はもっと広いようです。豊田市の五平餅店で聞いたところ、五平餅の棒も"ほせ"と呼ぶとのこと。しかし後日、安城市和泉町の軽食店「不二」で女将さんに聞くと「だんごの棒は"ほせ"だけど、五平餅の棒は"ほせ"とは呼ばないねえ」との証言も。"ほせ"は地域によって指すものが違う?

なんと編み針まで!奥深い"ほせ"ワールド

arekore15_08.jpg

また、常滑市で聞き取りしたご婦人からはこんな情報も。知多半島でも"ほせ"は通用しますが、この方は、編み物に使う編み針も"ほせ"だというのです。

この用法を知る人には豊明市や知立市でも出会った一方で、碧南市や安城市では知らないという回答が多勢。もしかすると尾張を中心とした呼び方かも。

さらに渥美半島では、網の繕いに使う「網針」を"ほせ"と呼ぶ漁師もいました。いやはや、意外に奥が深い。

次世代に残していきたい"ほせ"

arekore15_09.jpg

というわけで"ほせ"は碧南市周辺に限らず、愛知県の広い範囲で使われている言葉であることがわかりました。ただ、子どもや若い人には次第に通じなくなりつつある「絶滅危惧語」のようです。

なぜ碧南市では若者も使っているのかは突き止められませんでしたが、二世代・三世代家族が多くおじいちゃんおばあちゃんの言葉が下の世代に伝わりやすいという理由もあるかもしれません。

そんな碧南市はもしかすると貴重なサンプルなのかも。言語学の専門家に研究してほしいところです。 ぜひ次の世代にも"ほせ"をつなげたいですね!(取材:内藤昌康)
(取材協力:だんご屋・天王だんご屋・不二・山田商店・ひらや・フードセンターかどや・Cafe Petale)

関連記事